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留職と海外型フィールドスタディをきっかけに見つけた海外進出のチャンス

衛星データとAIを活用して農業の課題解決に取り組むベンチャー企業・Sagriの代表、坪井さんは留職と2回のSocial Innovation Mission(以下、SIM)に参加しました。

「留職とSIMの参加、どちらも海外進出のきっかけになった」と話す坪井さん。プログラムでの学びとその後の事業の変化について、SIMを担当し、その後も坪井さんに伴走した田熊が深掘りしていきました。

インタビュイー:坪井 俊輔さん(写真・右)
サグリ(株)代表取締役 CEO。2018年にインドへ留職し、
20年に海外型 社会課題体感フィールドスタディ(通称 "SIM")、23年にSIMケニアへ参加

インタビュワー:田熊 彩子(写真・左)
クロスフィールズ ユニット統括リーダー
SIMケニアをはじめ、社会課題体感フィールドスタディを主に担当

留職でインドへ。海外進出の可能性を実感

――まず、留職に参加したきっかけと活動内容について教えてください。
留職に参加したのは2018年、Sagriを創業して間もない頃でした。Sagriは衛星データとAIを活用して世界の農業課題の解決を目指す企業です。

ただ、2018年頃はまだ海外に飛び込めず、日本で農業を学んでいました。
海外で挑戦する機会がほしい……そう考えていたタイミングで「学生起業家を対象にした留職プログラムがある」と聞き、またとないチャンスだと感じ参加に至りました。

留職先で議論を重ねる坪井さん(写真・右)

留職先はインドで農家向けアプリ開発を行うベンチャー企業でした。3ヶ月の留職は本当に色々なことがあったのですが、最終的に「海外進出できる」という確信を持てたことが大きいですね。

現地で様々な人とのコミュニケーションを経て、異なる価値観やあらゆる物事を受け入れられるようになったら、自分のなかにあった海外進出に対する障壁が取り除かれた感覚が生まれたんです。

実際、留職後にインドでの事業展開を開始したのですが、留職の経験がなかったらSagriの海外進出は遅れていたと思います。

訪問先と参加者から刺激を得たSIMインド

――その後、2020年1月のSIM(Social Innovation Mission)にも参加されましたよね。この時はどんな経験をされましたか?

SIMも舞台はインドでしたが、異なる視点からインド社会や自身の事業について考える機会になりました。SIMではインドの社会的起業家を訪問する機会が多くあったのですが、それぞれの企業がディープに現地の社会課題解決に取り組んでいて衝撃的で。一見すると価値のないものから価値を生み出し、社会を着実に変えていく彼らの様子に心が動かされました。

プログラムでは農村部で活動する社会的企業も訪問

あまりに衝撃的で、毎回の訪問後に消化不良のような気持ちになったのですが、他の参加者と対話することで解消されていきました。最初は「彼らの事業と比べると、Sagriの事業は無意味ではないのか?」という自己否定のような気持ちになってしまったのですが、他の参加者と対話することで徐々に気持ちが整理されていき、やがて「Sagriの事業を通じて、これから自分がやるべきことは何か?」と考え方をシフトできて思考がクリアになっていったんです。

SIMインドでは大企業の役職者20名と1週間過ごしたわけですが、最初は「このなかに自分の居場所はあるのか?」という不安もありました。でも同じ経験をし、一緒にご飯を囲むうちに距離がどんどん近くなり、最終的には事業やリーダーシップのあり方など、かなり深いテーマまで語り合える関係性になりました。

プログラム後半には参加者同士で学びを共有した(本人・写真左)

SIMケニアに参加、アフリカ進出へ一歩近づく

――2023年1月にはSIMケニアに参加されましたが、再び参加した理由は何ですか?
元々、事業のアフリカ進出は頭の片隅にありました。そしてSIMケニアの話を聞いたとき、「SIMインドで経験したように、今回もケニアのディープな側面を知ることができそう」という期待と、自分の価値観がアフリカでどのように変化するのか見てみたいという好奇心から参加を決意しました。

SIMを通じて1週間どっぷり現地につかった結果、「アフリカに事業進出できそう」という気持ちが生まれ、その後は実際にケニアでの事業展開を進めています

SIMケニアでも複数の社会的企業を訪問し、現地のCEOらと対話する機会が多くあったのですが、そこでSagriのサービスについて紹介すると興味を持ってくれる企業が多く、協働へ向けて話が進んでいったんです。

現地の団体と対話を重ねていった(本人・写真左)

――私自身、ケニアでどんどん質問をする坪井さんがとても印象に残っています
最初からアクセル全開で、訪問先ではとにかく手を上げて質問していましたね。笑 知りたいことが沢山あっただけでなく、SIMは2回目なので参加者をかきまぜるような存在でいよう、と意識した部分もありました。そのためSIMインドよりも早い段階で参加者と打ち解けられて、彼らとの会話からかなりの刺激やヒントをいただけました。

参加者だけでなく、訪問先からも多くの刺激をもらいました。特にキベラスラムに訪問した時のこと。「もしSagriがスラムの課題解決に取り組むとしたら、どのような事業モデルだと最大限の価値を出せるのだろうか?」と考えたんです。つまり課題解決には寄付などを募って現地に直接リソースを届ける形と、そうではなく「貧困が起こる社会構造」の解決に取り組む間接的なアプローチがある、と。

そしてSagriは「農業課題の解決を通じて、貧困が解決される仕組みづくりで社会に価値を届けられる」と再認識し、この意識を大切に今後の事業戦略の策定をするようになりました。

訪問先の1つ、キベラスラムにて

――SIMインドとの違いはどういった点でしたか?
見える社会の景色もそうですが、一番はSIMインドから3年を経て自分の視点が変わっていたことがあります。

インドでは「個人として」の視点が強かったのですが、ケニアでは事業運営する立場としても物事を見て考えられたので、ただ訪問先の取り組みに圧倒されるだけではなく、「もし自分がこの団体のリーダーだったら、どのように事業戦略を立てるか?」と、現地リーダーの視点に立って考えたり、質問したりできたんです。

今後、Sagriではアジアとアフリカでの事業展開を目指しています。具体的には衛星データとAIデータを活用して、現地の農業生産の効率化に寄与していきたいです。ただ、すべての国に拠点を置くのではなく、アプリさえあれば現地の農家さんや農協が活用できるような仕組みとして確立していきたい。そうすることで、より広く・速く・多くの方々にSagriのソリューションを提供し、現地の農業の役に立てると考えています。

実は田熊さんにはSIMケニア後に2ヶ月ほどSagriの事業戦略策定に伴走してもらい、おかげでアフリカ進出に向けたマイルストーンが明確になりました。今でも田熊さんに引いてもらったロードマップを元に事業計画を策定しているんです。

――坪井さんにとってクロスフィールズはどんな存在ですか?
創業時からSagriと自分を応援してくれる存在ですね。あとは、海外とのつながりをくれる存在でもあると感じています。実際に海外進出の転機はすべてクロスフィールズのプログラムがきっかけでした。

クロスフィールズのプログラムの特徴に、その場にいる人が「個人」としてつながれることがあると感じています。たとえば参加者同士やクロスフィールズのスタッフとの距離がとても近く、濃い関係性になれる。そういったプログラムって他にないと思うんです。

これからもクロスフィールズのプログラムで得たつながりや視点を活かしつつ、Sagriのビジョン実現に向かって走り続けます。その過程で、何らかの形でまたクロスフィールズと交われる気がしていて、今から楽しみです。

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坪井さんが参加したSIMインドとケニアの様子は、それぞれ以下の動画よりご覧いただけます。

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