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日本からラオスに「越境」ーリモートで現地の課題に挑んだ3ヶ月

今回は「オンラインプロボノ」の様子をお伝えします。このプログラムは業務時間の20%程度を使い、新興国の社会課題に日本からリモートで取り組むものです。参加したのはアステラス製薬(株)の武久さんと片野さん。MRとして経験を積んできた2人です。

「スキルを活かして社会貢献したい」「リモートで新興国の課題解決、という新たな挑戦をしたい」。そんな思いを持つ2人が2020年12月から3ヶ月にわたりプロボノとして支援したのは、ラオス農村部で貧困問題などに取り組むLaos Buffalo Dairy(以下、LBD)です。

週の80%はアステラス製薬、残り20%はラオスの人々と働くなかで、海外とコミュニケーションする際の姿勢に変化が起こったり、リスクを恐れず挑戦するマインドが生まれたといいます。2人はどんな経験をしたのでしょうか。

コロナ禍でも活動を継続したい!ラオスからのSOS

まずLBDへの理解を深めるため、2人はオンライン会議を重ねていきます。LBDはオーストラリア人のSusie Martinさんが創立しました。農家から水牛をレンタルしてチーズ等の乳製品を製造・販売しています。レンタル料を支払うことで農家の貧困問題を改善するだけでなく、販売で得た利益を現地スタッフの雇用や、農村の栄養環境を改善する事業等に充てています。

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コロナ禍で観光客が激減し、乳製品の売上に大きな影響が出ている。このままでは活動の継続が難しい。新しい販路を見つけるため水牛チーズの日本輸出を検討しており、2人にぜひサポートしてほしい

Susieから現状を聞いた2人は「自分たちの取り組みが農村の人々の生活につながる」 「日本にいるからこそできることがある。必ず成果を出したい」と、決意を固めていきます。

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張り切ってスタート!2人を待っていたのは‥

MRとして9年間経験を積んできた武久さんは営業を担当することに。5件の代理店契約という目標を掲げ、販促資料の作成に取り掛かります。さっそく営業を始めようとした1月中旬、緊急事態宣言が。「営業は対面が基本なのに何もできない。外食業界にも影響が出るだろうし、どうすればいいんだろう‥‥」と、思わず不安を口にします。

一方PR担当の片野さんは業務を進めるなか、コミュニケーションの難しさを痛感していました。担当する日本語版webサイトのアイデアを出してもLBDの反応がないのです。「週1のミーティングに代表が出席しないこともあって‥‥。webサイト作成は自分でやりきったけど、なんかモヤモヤする」。

同時に本業も多忙になるなど、序盤で壁にぶつかった2人。しかし思いがけないことから変化が起こりました。

思い込みをなくしたら結果がついてきた

「このままじゃ5件の代理店契約は無理かもしれない‥‥」諦めかけた武久さんを救ったのは、Susieがかけた言葉でした。

Susieから『契約締結にこだわらず、代理店候補との信頼関係を構築してもらいたい』と言ってもらえて、一気に肩の荷が下りたんです。それからスイッチを切り替えました。出来ることをやるしかない、とメールでオンライン面談のアポを取っていきました。90件以上にアプローチして、複数の代理店とLBDをつなぐことができました。営業は対面じゃなきゃとか、コロナだから売れないだろうって思い込んでいたんですよね

コミュニケーションの鍵は「想像力」

片野さんにも転機が訪れます。

『LBDの反応が悪いのは、私たちのコミュニケーションに問題があるのかも』と、武久さんに言われて気づいたんです。自分が伝えたいばかりでLBDに寄り添えていなかったな、と。対話を重ねていくうちに相手が多忙だったとわかりました。それからは相手が反応しやすいよう相談内容をより明確にし、協力してほしい理由を伝えました。そうすると徐々にコミュニケーションがスムーズになって。その後実施したオンラインイベントでは企画から開催まで一緒に取り組むことができました

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派遣先・LBDからの声

3ヶ月間の活動について、LBDの代表・Susieはこう振り返ります。

私たちだけではできなかった、日本市場へのアプローチが実現しました。コロナで厳しいなか、期待以上の成果です。背景には2人がスムーズに物事を進めていったことがあります。毎週の会議ではマイルストーンを設定してくれたので、意思決定を重ねられました。またグラフや図なども使い、自分たちの状況や考えを素早く正確に伝えてくれました。

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ラオスに「越境」、自身が感じた変化

日本で働きながらラオスの社会課題に取り組んだ3ヶ月を2人はこう振り返ります

海外とのミーティングに自信がついた
海外の人と協働するときは、会議の目標設定と意見を丁寧に伝えることが大事だと実感しました。これまでは英語の壁もあって主張ができなかったんです。でも今回は限られた時間でプロジェクトを進めるため、臆せず意見を伝えました。その際、必ず「会議の目的」を整理し相手に伝えることで、より意思疎通がうまくでき、決定を重ねて前に進めました。本業でも以前より自信を持って海外との会議に臨めています。(武久さん)
「まずやってみる」姿勢が生まれた
普段と全く異なる環境だからこそ、思い切った行動を繰り返せました。「失敗するかもしれないけど、まずやってみよう」とトライし続けたら、「挑戦」が怖くなくなったんです。実は同じ時期に本業でも自分からチャレンジしてみました。結果、余計なことしちゃったかも‥‥と落ち込んだけど、周囲から「その姿勢がありがたい」と言ってもらえて嬉しかった。これからも積極的に色々な挑戦をしていきたいです。(片野さん)

編集後記

アステラス製薬で働きながらリモートでラオスを支援した2人。担当したプロジェクトマネージャーからは、「プログラム中に学んだことをすぐ本業で活かし、どんどん自信をつけていた。3ヶ月で見違えるような変化でした」という声が届いています。ラオスへの越境を経て成長した武久さん、片野さんの今後の活躍に期待が高まります。