ダイバーシティ&インクルージョンとは? 事例から意味を理解しよう
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ダイバーシティ&インクルージョンとは? 事例から意味を理解しよう

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現在、広く浸透しつつあるダイバーシティ(多様性)と共に、注目を集めるインクルージョン。「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」として使われることも多く、目にする機会も増えています。ダイバーシティ&インクルージョンの意味や違いについて理解するとともに、D&Iを導入した企業の事例や、取り組むにあたって人材領域の担当者が意識すべき点をご紹介します。

ダイバーシティ&インクルージョンとは

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「ダイバーシティ&インクルージョン」をわかりやすく表現すると、「人材の多様性(=ダイバーシティ)を認め、受け入れて活かすこと(=インクルージョン)」となります。以下ではダイバーシティとインクルージョンの定義をそれぞれ確認していきます。

■ダイバーシティとは

ダイバーシティ(Diversity)は「多様性」「相違点」「多種多様」などと説明されます。ビジネスの現場においては「組織の中に多様な人材が集まっている状態」を示すことが多いのではないでしょうか。単に多様性といっても、いくつかの観点で分類することができます。多様性の分類などについては以下の記事で詳しく解説しています。合わせて確認してみてください。

■インクルージョンとは

インクルージョンは「包括」「受容」という意味を持ち、ビジネスにおいては「一人ひとりが能力や経験、考え方などの個性が認められて仕事に取り組む機会を持ち、多様な人材が活用されている状態」を指します。インクルージョンが実現された企業や組織では、多様な人材が個性を発揮しながら、他のメンバーと協力し一体感をもって働くことができます。

■ダイバーシティだけでは生産性が低下する?

ダイバーシティとインクルージョンは両立してこそ意味がある概念です。経済産業省が掲げるダイバーシティ2.0では「多様な人材を受け入れるだけでなく、活躍に向けた取り組みもセットで行うことが非常に重要。多様な人材はいるが、それに対応した取り組みを行っていない企業は、人材の多様性が乏しい企業よりも生産性が低くなる可能性」があることを指摘しています。

例えば多様性をもつ人材が組織にインクルージョンされていない状態であると以下のような問題が生じる可能性があります。

・マイノリティとして他の社員から差別されたり排斥されたりする
・女性や障がい者などは「◯人雇用する目標があるから、能力がないのに雇用された」とみなされてしまう
・せっかく雇用されても社内に活躍の場がなく、結局退職してしまう

このような問題を防ぎ、多様な人材が持つ能力や可能性を活かすためにも、組織がダイバーシティとインクルージョンを同時に取り組むことは非常に大切です。

最近ではダイバーシティとインクルージョンは分けて考えずに、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)とあわせて呼ぶ企業が増えてきています。

出典:経済産業省『ダイバーシティ2.0一歩先の競争戦略へ』

ダイバーシティ&インクルージョンの事例

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ここではダイバーシティ&インクルージョンを積極的に進めている企業の事例をご紹介していきます。損保ジャパン、オムロン、ノバルティス ファーマでは、企業の理念にもダイバーシティ&インクルージョンが導入され、経営と一体化した取り組みが行われています。

■事例1:損保ジャパン株式会社

損害保険ジャパン㈱では、ダイバーシティ&インクルージョンを浸透させるための行動計画を策定しています。「Diversity for Growth ~損保ジャパンのダイバーシティ&インクルージョン推進の取組み~」として公表されている行動計画には以下のような目標が記載されています。

・女性管理職比率を2023年度末までに30%達成
・テレワークの推進・育休取得推進を軸とした柔軟な働き方の推進
・仕事と育児を両立しながらキャリアアップできる環境構築のために、2023年までに男性の育休取得率100%達成

これらの目標を実現するため、同社ではさまざまな取り組みを行っています。

出典:損保ジャパン『ダイバーシティ&インクルージョン

■事例2:オムロン株式会社

オムロン㈱は「ダイバーシティはオムロン発展の原動力」と掲げ、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組んでいます。1972年より日本で初めてとなる障がい者が働く福祉工場「オムロン太陽」を設立していることからも、実際にダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを行っていることがわかります。また、2012年からは女性管理職比率の向上に向けた施策も行っており、2021年では開始当初と比較して女性管理職数は5倍近くとなりました。女性管理職比率のさらなる向上にむけて、今後も取り組みを継続していくようです。

出典:オムロン『ダイバーシティ&インクルージョン

■事例3:ノバルティス ファーマ株式会社

バルティス ファーマ㈱では、ダイバーシティ&インクルージョンを経営戦略の重要な観点と位置づけ、部署を超えた4つの社員ネットワークを構築。多様な経験と視点を持ち寄ることで、社員が自分らしく活躍できる風土づくりを後押しする取り組みを行っています。テーマは「子育て」「介護」「患者さんを想う」「SOGI(性的指向/性自認)」で、これら以外にも「無意識の偏見」を取り除くための研修を年間50回以上実施。ダイバーシティ&インクルージョンを加速させるため、社員の理解浸透に取り組んでいます。

出典:ノバルティス ファーマ『インクルーシブな風土醸成

人材領域の最重要項目となるダイバーシティ&インクルージョン

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ダイバーシティはその概念を取り入れるだけではなく、多様な人材に対して取り組みを持って推進し、成果をもたらさなければなりません。観点は主に、女性・シニア・障がい者・外国人の活用推進、LGBTQの理解推進、ワークスタイル等の働き方改革が挙げられます。それぞれに関して、日本における国の方針や法令と人材領域で取り組むべき内容を確認していきましょう。

■女性の活躍促進

日本では2016年に「女性活躍推進法」が施行されたように、女性活躍は国も積極的に政策を進めている取り組みです。これによって具体的に国、地方公共団体、301人以上の大企業であれば「自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析」「その課題を解決するのにふさわしい数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表」「自社の女性の活躍に関する情報の公表」を義務づけています。

国の取り組みを受けて企業の人材領域が必要になってくる施策は、女性社員向けの研修、社内で活躍する女性のロールモデルを提示、女性リーダー向けの教育制度を設けて育成し、女性管理職を増やす、結婚・出産後にも仕事を続けられるように休暇や時短・在宅勤務などの制度策定などが考えられます。

出典:厚生労働省『女性活躍推進法特集ページ

■シニアの活用促進

これまで日本の多くの企業では、60歳定年制が一般的でした。しかし、少子高齢化社会においてシニア層が活躍できる環境づくりは企業にとって重要になってきました。2021年4月には「高年齢者雇用安定法」の改訂によって、従来65歳までだった雇用確保措置が70歳まで努力義務ながら引き上げられました。このことからも、企業が再雇用を見据えて定年前から研修を実施したり、長く働ける部署に移動して経験を積める制度を策定したりするなど、シニア活用に向けた施策を行うことがますます期待されています。

出典:厚生労働省『高年齢者雇用安定法改正の概要

■障がい者の雇用促進

教育の現場で進む「インクルーシブ教育」と同様に、企業においても障がい者のインクルージョンは重視されるべき取り組みです。「障害者雇用促進法」では事業主には以下のことが求められています。

・障がい者雇用率に相当する人数の障がい者の雇用を義務づけ
・障がい者の雇用に伴う経済的負担の調整
・障がい者を雇い入れるための施設の設置、介助者の配置等に助成金を支給

人材領域においては、障がい者雇用率を公表したり、障がい者がスキルアップできるような研修制度を設けたり、社内に相談窓口を設けたりなどの取り組みが必要になってくるでしょう。

出典:厚生労働省『障害者雇用促進法の概要

■外国人の活用

外国人の活用における法定義務は特にありませんが、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(外国人指針)」があります。これは企業が外国人労働者に対して取るべき必要な措置を厚生労働省が定めたものです。

外国籍の人材が企業で活躍するため、企業の人材領域には社内メンバーが外国人社員の必要性を理解する機会や、受け入れやすい雰囲気や土壌づくりを行うことが求められてきます。

出典:厚生労働省『外国人の雇用

■LGBTQの理解促進

日本経済団体連合会が会員企業と団体に実施したに2017年の調査では「LGBTに関して企業による取り組みは必要だと思うか」という問いに91.4%が「思う」と回答しました。しかし「何らかの取り組みを実施しているか」という問いに対して「すでに実施」と答えたのは42.1%にとどまっています。つまり多くの企業で高い意識や理解を持っているものの、実施に向けた行動は具体性に欠けているという状況です。LGBTQの理解促進に向けて、企業の人材領域では以下のような取り組みが求められると考えられます。

・差別の禁止を社内規定やポリシーを明記し、理解促進のための研修を実施
・LGBT専門の相談窓口を設ける
・社内に当事者や支援者、理解者のネットワークを構築。理解や交流を深める
・トイレの一部をジェンダーフリー化
・配偶者と同等の福利厚生や待遇を同性のパートナーが受けられるようにする

出典:日本経済団体連合会『ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて

■多様な働き方の推進

ダイバーシティ&インクルージョンには、女性やシニア、LGBTQ、外国人という属性に関わる活用はもちろん、さまざまな事情でフルタイムの勤務が難しくなり、退職を余儀なくされてきた人たちも含まれます。そのために属性だけの対応ではなく、働くための職場環境の改革が必要です。具体的には以下のようなことが考えられます。

・正社員のまま時短勤務ができる制度を策定する
・テレワークや在宅勤務などをフレキシブルに活用できる制度を導入する
・妊娠・出産・子育てや介護のために無理なく十分な休暇が取れる制度を整え、休暇取得をしやすくする

まとめ:ダイバーシティ&インクルージョンで企業価値を高めよう

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ダイバーシティは様々な企業のみならず、社会一般にも広く浸透しつつあります。ダイバーシティは本来、取り入れた企業や社会を発展させるための「手段」のひとつにすぎません。ダイバーシティを導入しただけで終わらせるのではなく、多様性をもつ人材が活躍し、企業と社会の発展につなげることが本来の目的です。そのためにはインクルージョン、つまり受容して活用することこそが欠かせません。ダイバーシティ&インクルージョンは組織全体として取り組む必要があり、人材領域ができることは制度の設計や研修の実施などさまざまあります。まずはダイバーシティ&インクルージョン実現に向けて、自社が取り組むべき課題は何か考えてみてはいかがでしょうか。

NPO法人クロスフィールズは、社会課題体感フィールドスタディやVRワークショップなど「多様な人や価値観と出会う」事業を通じて、企業のダイバーシティ&インクルージョン加速を支援しています。具体的な取り組みは公式noteやホームページでご紹介しています。ぜひ参考にしてください。


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社会課題の現場と企業で働く人をつなぎ、課題解決とリーダー育成を目指すNPO法人クロスフィールズの公式noteです。新しい取り組みの数々や、その裏にある一人ひとりの物語をお届けします。