インドでITコンサルが見つけた「真の課題」とは
電通国際情報サービスの真鍋さんは2014年1月から4月まで留職に参加しました。インドでマイクロファイナンス事業を展開する団体にてシステムの効率化とIT人材の育成に取り組みました。10年にわたりITコンサルタントとして働き、欧米でのビジネス経験もある真鍋さん。留職は自ら会社に働きかけて実現したと言います。
本当の意味でグローバル人材になるには、今後の発展が見込まれる新興国での経験が必要だと感じていました。そんな時に留職を見つけたんです。新興国でビジネスを経験できるだけでなく面白いことができそうだと思い、会社に直談判して参加を実現しました
派遣先はインド・バンガロールを拠点に活動する社会的企業・Chaitanya(チャイタナ)です。貧困層向けにマイクロファイナンスを展開し、2014年当時は約35万人に貸付を行っていました。真鍋さんがチャイタナから伝えられた業務内容は「IT戦略の考案」という漠然としたものでした。留職期間は3ヶ月。課題の分析から具体的な解決策の提案・実施まで取り組むことが決まります。日本から真鍋さんを遠隔支援するリモートチームも結成され、若手3名の社員を巻き込んで活動しました。
なかなか成果の出ない日々…
現地活動の1週目、さっそくチャイタナが貸し付けを行なっている村の視察やスタッフへのヒアリングを始めます。得た情報を元にITシステムの課題を分析し、改善策を提案していきました。しかしどれも経営陣には採用されません。「このまま成果を出せずに終わってしまうのではないか‥‥」。不安を抱きながら日本のチームと課題の分析を続けました。
代表の本音から見つけた「真の課題」
それでも提案が認められない日々が続きます。何が悪いのかわからず八方塞がりとなっていたとき、転機が訪れました。
サミットさんから「私だって意思決定するのは不安なんだ。特にITに関しては専門外なんだ」と語気を強めて言われました。その瞬間、真の課題が見えた!と思ったんです。それは「経営者とITのつなぎ役」の不在でした。
これに気づいてからは自分自身が「つなぎ役」として経営陣の意思決定をサポートしていきました。私がいなくなった後もこの役割が必要だと感じたため、ITに精通するマネージャーの育成計画をつくりました
3ヶ月で得た自信と生まれた変化
代表・サミットは真鍋さんの活動を評して「期待していたのはIT戦略の考案だけだったが、最終的には人材育成にも取り組んでくれた。プロとして期待以上の成果だ」とコメント。団体へ大きな貢献を果たしました。自身も「私は世界でも通用するんだ、という大きな自信になった」と言います。
成功の要因は、経営者と同じ視点に立てたからだと真鍋さんは振り返ります。
今回気づいたのは、与えられた課題は必ずしも真の課題ではないこと。真の課題を見つけるには相手と同じ視点に立つ必要があるということです。経営者と同じ視点に立つため、ITだけでなく財務や人事における課題にも目を向けました。すると視座が高まり、より長い時間軸で解決策を考えることができました
社会課題を痛感して考えた解決への糸口
インドでは現地における社会課題の現実を目の当たりにした、と真鍋さんは言います。
団体が展開するマイクロファイナンスは貧困層向けですが、規制もあり最貧層には提供できていません。このことをサミットさんに尋ねると『その通りなんだ』の一言。普段おしゃべりな彼がそれ以上何も言わず、しばらく遠くに視線を向けていました。この姿を見て、課題解決の長い道のりを痛感したんです。社会課題は一朝一夕には解決できない。だからこそもっと多くの人材がスキルを活かして社会課題に取り組む必要がある。そう考えるようになりました
真鍋さんにとってリモートチームのメンバーが社会課題の解決に関心をもったことは嬉しい出来事だったとのこと。遠く離れたインドの課題について理解を深め、現地のリーダーに英語で提案する経験をしたメンバーからは「次は自分が現地で活動したい!」という声も出てきたそうです。
担当プロジェクトマネージャーより
受け入れ団体から「インドの生活や働き方など、異文化にすぐ馴染める柔軟性が強みだ」と言われるほどスムーズに現地へ溶け込んでいった真鍋さん。休日は現地のビジネスパーソンが集まるコミュニティに参加するなどアクティブに行動していました。経営者と同じ視点で考えて業務を進める経験を通して、より長い時間軸で物事を捉える力を身につけました。リモートチームの巻き込みにも試行錯誤を重ね、リーダーの姿勢を自然と意識するように。視座を高め、グローバル人材としての自信を得た真鍋さんの今後に期待しています。