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PRIとは? ESG経営との関係性とこれからの人材領域に必要なこと
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PRIとは? ESG経営との関係性とこれからの人材領域に必要なこと

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待ったなしの環境問題、多様性社会の広がりによって、SDGsが一般的になってきました。SDGsとともに注目を集めるのがESG。環境性、社会性、企業統治指針が求められる活動であり、経営の方向性を示すものですが、ESGはなにを起点として提唱されるようになったのでしょうか。カギを握るPRIについて解説し、人材領域がESG経営において実践すべきポイントもあわせて紹介します。

PRI=責任投資原則とは?

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近年のESGに対する関心の高まりから、投資家は企業の環境性、社会性、企業統治指針に対する活動に着目して投資を行うことが問われています。この投資活動を推進している「PRI」とはどのようなものでしょうか?

PRIとは

PRIとは、国連環境計画金融イニシアティブ(UNRP FI)と、国連グローバル・コンパクトによって設立されたフレームワーク(共通して用いることができる考え方、戦略立案)のひとつです。「Principles for Responsible Investment」の頭文字を取った言葉で、日本語では「責任投資原則」と訳されます。2005年に公表され、コフィ・アナン第七代国連事務総長が、2006年4月にニューヨーク証券取引所において発表しました。

金融機関などの機関投資家が投資における意志決定を行う際、投資先となる企業が、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の取り組みを行っているか、つまり「投資をする際には、ESG経営を推進する企業を選ぶべきである」という「責任のある投資を促すために原則」として掲げたものです。

日本においては2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がPRIへ署名したことで話題に。世界最大の機関投資家とも言われ運用額は141兆円にものぼるGPIFがPRIに署名したことのインパクトは大きいものでした

ESG投資とは

PRIは環境、社会、企業統治の観点で責任のある投資を促すための原則です。このEnvironment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)の頭文字を取ったものがESGです。このESGに着目して投資を行うことをESG投資といい、財務情報だけでなく、環境、社会、ガバナンスの要素を考慮した投資を指します。

その背景には大きな資産を超長期にわたって運用する機関投資家を中心に、企業経営の継続性(サステナビリティ)が、投資の評価軸のひとつとして普及したことがあります。ESGは、SDGs(持続可能な開発目標)と共に注目を集めているのです。

ESG投資の広がりは2008年のリーマンショック以降、投資家が「社会に対して誠実な企業に投資したい」と考え始めたことが出発点です。その一方で、これまでは投資判断を財務情報だけに頼っていたため見極めが難しいのが現実でした。

そんな状況において「環境に配慮し、社会を裏切らず、継続的に成長できる」という視点を備えたESGは、投資家のニーズに応えられるため、注目が集まりました。ESGの考え方を重視する投資家が増えることは、環境・社会・企業統治を配慮した事業活動をしない企業は投資対象になりづらいといえるでしょう。
これはビジネス界における大きなパラダイムシフトを生み出しており、今後この流れはさらに加速すると考えられています。

PRIの6つの原則

PRIには6つの原則が掲げられています
1.私たちは投資分析と意思決定のプロセスにESG課題を組み込みます
2.私たちは活動的な所有者となり、所有方針と所有習慣にESG問題を組み入れます
3.私たちは投資対象の企業に対してESG課題についての適切な開示を求めます
4.私たちは資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるよう働きかけを行います
5.私たちは本原則を実行する際の効果を高めるために協議します
6.私たちは本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します

出典:国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP FI) 『責任投資原則』

PRIは成長を続ける

PRIが掲げる6つの原則に署名した機関は、2020年8月時点で世界3,332機関、日本85機関でしたが、2021年8月では世界4,419機関、日本では98機関にのぼりました(2021年8月13日現在)。署名機関の資産残高は総額100兆ドル(約1京1000兆円)超と、世界の株式市場の時価総額に匹敵する規模。

日本で署名した98機関のうち資産の保有者(アセットオーナー)は24社で、その多くは生命保険会社や損害保険会社、年金基金など、超長期に保有資産を運用する必要がある業種が多く含まれており、今後も成長が見込まれています。

PRIとESGの関連性

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PRIとESGは切っても切れない関係です。なぜPRIにはESGが欠かせないのか、関連性について確認しましょう。

なぜPRIに署名する機関が増えているのか

PRIに署名する機関が増えている理由のひとつに、気候変動による異常気象などの影響があります。地球温暖化は単なる数値だけではなく、異常気象のように身体で体感できるほど進行していることから、ESGに関心が低い企業には投資できないという流れが加速しているのです。

また、123カ国と1つの地域(2021年4月時点)が2050年に温室効果ガス0(カーボンニュートラル)を宣言しているという世界の潮流とあわせて、PRIの原則に賛同し、ESGに配慮された投資を進めることが、より持続性のある投資につながると判断されています。

PRIが求めるESG情報の開示方法とは

企業がPRIの掲げる原則に準拠し、ESG投資をスムーズに受けるためには、正しいESG情報の開示活動が不可欠です。ESG投資の現状を理解し、自社に適したESG課題への取り組みを進め、中長期的な企業価値の向上を目指す際に参考になるガイドブックを株式会社日本取引所グループが公開しています。このガイドブックでは大きく「ESG課題とESG投資」「企業の戦略とESG課題の関係」「監督と執行」「情報開示とエンゲージメント」の4つのステップで取り組む方策を提示しています。

引用:ESG情報開示ガイドブック

なかでも注目したいのは、ステップ2の「企業の戦略とESG課題の関係」です。ESG課題は多様で広大な領域があるため、正しく自社の事業の成長に結びつけることができるかが重要。企業価値向上の観点からビジネスモデルとの関係を整理し、どのようなESG課題を解決することが中長期的影響をおよぼすかも検討しなければならないでしょう。

特に進めなければならないのがマテリアリティ(重要課題)の特定です。企業と投資家を繋ぐ共通言語となる「価値協創ガイダンス」においても、「自社のビジネスモデルの持続可能性にとっての重要性」をマテリアリティとしています。

マテリアリティ候補作成リストにおいて外部環境・事業環境分析や、外部評価機関が設定する課題の活用、ステークホルダーとの対話など、ESG課題からマテリアリティ候補リストを作成する方法をとることで、社内だけでは抜け落ちてしまう項目を発見できるとしています。

取り組みが不十分だとPRIから除名されることも

PRIが機関投資家に求める最低履行要件を満たしていないと、PRIから除名されます。

最低履行要件は2018年より実施している原則に対して活動の不活発な署名機関が対象となります。運用総資産総額の50%以上にESG投資ポリシーが適用されなければ、最低履行要件に達しないとするハードルの高いものです。それほど投資家は真摯にESG経営をみており、年々シリアスになっています。

投資機関がこの厳しいハードルもクリアしてPRIへの署名を続ける意図は、PRI遵守に関するツールやウェビナーなどのサポートを受けることができるほか、署名会員との情報共有の機会が得られることにあります。

つまりESG投資先として間違いのない企業だけに投資が集中することを意味しており、PRIの署名機関数が拡大を続けることはESG投資がより加速していることの裏付けともいえるでしょう。

PRI・ESG経営を理解して選ばれる企業に

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この記事を読まれている方は人事担当者が多いのではないでしょうか。人事担当者がPRIに基づくESGに配慮して、人材領域の活動を行う際に意識したい4つの取り組みを紹介します。

人事ができる4つの取り組み

人材領域における、PRIが定めるESG投資に準拠した活動には、「ダイバーシティの推進」「労働環境の安全確保」「働きがいの創出」「適切な情報開示」があります。それぞれ常日頃から人材領域において推進しているものばかりでしょう。

これら4つの取り組みをより注力して進めながら、どれほど達成したかを明示的に情報開示できるようにしましょう。4つの取り組みについては以下で詳しく説明します。

ダイバーシティを推進する

ダイバーシティの推進はさまざまなバックグラウンドを持ったスタッフに対して、格差や不公平感を与えることなく、活躍できる環境作りに向けての取り組みです。
日本国内においては女性管理職の積極登用やテレワークなどを含めたワークスタイルの拡大、障がい者雇用の拡充が該当します。多様な働き方の推進はESG経営における重要課題であり、人材領域が最も注力すべき業務のひとつです。

スタッフの安全を確保する

現場の安全管理をマネジメントや経営層がチェックすることは難しいのが実状でしょう。だからこそ、人事部門が間に入ることで事故や不正のない、安全かつ健全な職場を保つことが可能になります。

安全を確保できる組織体制や、評価精度を構築することも重要です。

働きがいを創出する

モチベーションやエンゲージメントといった言葉ともに、従業員の「働きがい」という価値観が重要視されています。

採用広報の現場であれば「働きがいのある企業」をPRすることは常に大きな課題として掲げられています。また研修担当であればプログラムによって業務のパフォーマンスをアップさせることは命題。

仕事を通じて成長できている・自分は必要な人材だ・能力を発揮できている、と感じてもらえる環境を提供することは、人事担当者の重要な役目の1つです。

情報を開示する

ダイバーシティの推進・スタッフの安全確保・働きがいの創出は、人事担当者にとって目新しいものではありません。どれも進める内容は従来どおりですが、重要な部分は目標を掲げ、どれだけ達成できたか、ということを広く情報開示すること。そのためにはそれぞれの項目において数値化する作業が必要です。

働きがいの創出のように数値化の難しい項目は社員へのヒアリングやインタビューなどを通じて、満足度や社員の声など詳らかに公表することが、情報開示には求められます。

PRIの意義を理解し最適なESG経営に人事からコミット

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注目を集めるESGまたはESG投資は、あくまでもPRIの名のとおり、責任のある投資の原則に従って、投資家が投資を行うというもの。ESGで掲げられる環境、社会、ガバナンスだけに目を奪われるのではなく、ステークホルダー、特に投資家がどのような基準に則って投資活動を行っているのかを把握することがESG経営を成功に導きます。

IPO(Initial Public Offering、新規株式公開)をしないスタートアップが注目される昨今、株式公開をしないからESG経営は関係ない、という時代ではなく、社会規範のひとつとしてESGに則った企業活動が求められています。

人事担当者としてもPRIの理念を理解し、ESG経営にコミットしていく姿勢が求められるのではないでしょうか。

NPO法人クロスフィールズは、社会課題の現場と企業で働く人をつなぐさまざまな事業を行っています。具体的な取り組みは公式noteやホームページでご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

また、PRIを踏まえたESG経営・投資の解説記事も公開しています。ぜひ参考にしてください。


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