心配性だった彼女がインドネシアで見つけた「未知の挑戦の楽しさ」
「まったく異なる環境でも人の役に立てるか、一度試してみたかったんです」
こう語るのはパナソニックの飯田さんです。空間照明の技術営業を10年間担当し、そこで培ったスキルを活かして留職に参加。インドネシアで伝統工芸品の製作・販売を通じて貧困層を支援するNGO ・PEKERTI(ペケルティ)で、2015年4月より2週間半にわたり活動しました。
ペケルティはインドネシア・ジャカルタを拠点に活動する団体です。経済的な理由で都市部への出稼ぎを強いられる人々に対し、農村で働く機会を創出することで、より多くの人が自分の村で家族と暮らすことを目指しています。具体的には農村部の貧困層に工芸品の製造方法を教えてゆくゆくは製造を委託し、その製品をペケルティが運営するショップやショールームで販売。収益の一部が作り手に還元される仕組みです。
飯田さんはペケルティが手掛けるショップとショールームの空間デザインに取り組みました。「2週間半という短期間では成果を残せないのではないか……」という渡航前の不安を吹き飛ばすほど、インドネシアでは目まぐるしい日々が待っていました。
毎日が意思決定!超スピーディな日々のはじまり
飯田さんはジャカルタに到着すると、さっそくペケルティが展開するショップとショールームの改善に取り組み始めました。担当は照明とレイアウトです。限られた時間で物事をスムーズに進めるために、ペケルティのメンバーと写真やスケッチを使うなど工夫してコミュニケーションを重ね、全員の認識を揃えながら改善アイデアを生み出していきます。
メンバーとの対話で生まれたアイデアはすぐに実行、修正します。飯田さんが「実際に計画が動き始めると、自分一人ではなく、周りの人々と一緒に進めることにより思っていた以上のスピードで進み始め、これまでの仕事では考えられないスピードで業務を進めていった」と言うほど、アイデアをどんどん形にしていきました。
大切なのは自分のこだわりより「相手目線」
ショップとショールームの改善が最終段階に入ったとき、予想外のことが起こりました。予定していた照明器具が調達できず、飯田さんの想定とは異なる空間デザインになってしまったのです。
信頼してもらって進めてきたのに意図したできあがりではなく、申し訳なくて、修正できないかとペケルティのメンバーに相談しました。すると「自分たちは気に入っているから、このままでいい」と言ってくれたんです
とはいえ心残りがあった飯田さんは、もし彼らが後になって当初予定のものに修正したいと思ったら実行できるよう、デザインの意図を伝えることに。飯田さんはこう振り返ります。
限られた期間や環境で完璧な結果を残すのは難しい。でもそれより大切なのは相手の目線に立って対話し、互いが納得することなんだと実感しました
生み出した成果が一歩踏み出す自信に
ショップとショールームの改善が完了し、飯田さんは帰国しました。現地での活動中は目に見える成果を実感できずにいましたが、帰国後にペケルティの代表から「飯田さんとショップの改善をしてから、店舗の売上増加やバイヤーとの新規契約が続いている。照明やレイアウトを変えるだけでこんなに多くの変化が生まれるとは思わなかったし、メンバーの勉強にもなった」という嬉しい声が届きました。
活動の具体的な成果に加え、団体メンバーからの反応も飯田さんの自信につながったといいます。
今まで自分としては当たり前にやっていたことも、留職中はメンバーから褒められ「教えてほしい」と声をかけてもらえました。また、完成したショールームを見た多くの団体スタッフから、感謝の言葉を伝えてもらえたときは本当に嬉しかった。2週間半という短い期間でしたが、自分の知識や経験は人の役に立つし、社会に貢献できると改めて認識できました
アイデアをゼロから形にする楽しさも体感したと振り返ります。
留職中に実施したクロスフィールズ担当者との1on1で、インドネシアでの状況を熱く語っている自分に「躍動感があって楽しそう」と言われました。このとき、新しい挑戦を楽しんでいる自分に気づいたんです。それまでは自分自身のことを、心配性で未経験なことにトライするのは苦手だと思い込んでいました。でも留職は短期間で成果が求められ、動かないと何も進みません。だからこそ、活動中は団体メンバーと意思決定を重ねて、とにかく実践していきました。気づけばそんな経験に自然と喜びを感じていたんです
留職を通じて自信を持つことができ、「一歩踏み込む」ことへの躊躇がなくなった飯田さん。帰国後は自ら新規案件の担当に手を上げるなど、新しい環境で挑戦を続けているそうです。
担当プロジェクトマネージャーより
飯田さんと帰国後に話した際、「行く前は不安だったけれど、現地に着いたらあとはやるだけ。難しく考える前に、まずは一歩踏み出す覚悟ができたんです」とすがすがしく語る姿が印象的でした。受け入れ先のペケルティから「飯田さんが来てから売上が伸びた」という声があったように、貢献が形になったことも自信につながった様子でした。留職で得た自信と行動力をもとに、今後も様々な挑戦をする飯田さんへの期待が高まります。