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アフターコロナに新興国へ留職。そこで見つけた「諦めない自分」

電源開発(J-POWER)では2017年より留職プログラム(新興国派遣)を実施してきました。その目的の一つに自律型人材の育成があります。コロナ禍を経て自律型人材の重要性が高まるなか、同社は2022年10月に一時中断していた留職(新興国派遣)の再開へと踏み切りました。

まずは2022年1月末に社内で公募を開始し、選考プロセスを経て4月に派遣者を決定。クロスフィールズと連携しながらコロナの感染状況を注視し、安全を確認のうえ2022年10月〜12月にカンボジアでの現地活動を実施しました。

今回の留職に参加した一松(ひとつまつ)さんは、カンボジアのMy Dream Home(以下、MDH)で活動しました。現地で社会課題解決に取り組むなかで、どのような成長をしたのでしょうか。

クロスフィールズとしても3年ぶりの新興国派遣となった本プログラム。その様子をお伝えします!

アフターコロナで新興国に留職した理由

一松さんはJ-POWERで技術職として9年間働いてきました。留職に参加したきっかけは海外への業務経験を積むことと、自身のリーダーシップを伸ばすことにあったといいます。

実は元々、留職の存在は知っていて、コロナ禍前から説明会に参加していました。入社時から海外事業に携わりたいという気持ちがあり、新興国という異なる環境に飛び込んで挑戦してみたいと思っていたんです。

また、留職は自分を変える機会になりそうだとも考えていました。心が折れてしまったり、失敗を恐れて挑戦できなかったりする自分を変えたいと思っていたんです。

留職(新興国派遣)は、コロナ禍で中止になってしまいましたが、再開するとの社内告知を見て『もうこれは行くしかない!』と応募しました。

派遣先のMDHは、カンボジア・プノンペンで低所得者層向けに住宅資材を販売するスタートアップです。

プノンペンでは人口の急増によって住宅価格が高騰している問題があります。この状況に対してMDHは低価格かつ環境に優しいレンガの製造から販売を行い、通常の50%ほどのコストでの住宅建設を実現しています。

そんなMDHで、一松さんは工場内の電力供給アセスメントと改善、生産設備の一部自動化などに取り組むことになりました。 

"すべての人に住宅を”ー代表の想いに動かされる

現地活動1週目、一松さんはMDHの代表・コンギーさんと工場や建設現場、彼らが提供する資材で家を建てた女性などを訪問していきました。現場を訪問するなかで、一松さんは自身の気持ちが徐々に変わっていったといいます。

MDH代表・コンギーさんより工場の見学を受ける一松さん(写真・右)

現場訪問を通じて、MDHが生み出す雇用や作り出す家は、多くの人の生活を向上させてきたのだと実感しました。

そして代表・コンギーさんの “すべての人に住宅を提供したい”という言葉を聞いて、留職への意識が変わりました。

現地渡航前は、”カンボジアで自分の知識を教えないと”と思っていましたが、現地では”とにかくMDHの活動に貢献したい”という気持ちに変わっていったのです。

さっそく一松さんは自身の経験を活かして、工場の生産ラインの自動化などの改善業務に取り組んでいきます。

業務外の時間でクメール語を勉強し、英語を話せないメンバーともコミュニケーションを図りながら業務を進めていきました。

スタッフへのヒアリングを行っていった(本人・写真右)

予定していた電力供給の改善や生産設備の自動化などの業務は順調に進む一方、一松さんはMDHの工場にある課題を見つけました。それは整理整頓がされてない、という点です。

工場は常にごちゃごちゃしていて、何がどこにあるかわからない状況。これだと作業効率が下がってしまうし、工場全体の雰囲気がよくないと思った一松さんは、思い切って代表に話してみることに。すると「実は以前から取り組みたい課題だった」と言われました。

この状況をどうにかできないか……。

そう考えた一松さんは、日本企業の工場でしばし取り入れられている5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の浸透に取り組む決意をしました。

到着直後の工場の一部

スタッフの顔を思い浮かべて立ち上がる

まず一松さんが行ったことは、5Sに関するセミナーの開催でした。

その後はクメール語でポスターを作成して工場に貼ったり、ルールを作成して目につく場所に掲示したりしました。

でもスタッフの意識は変わらず、工場はごちゃごちゃしたまま。

そこで「実際に5Sが実施されている工場を見たら、スタッフの意識は変わるかもしれない」と思いついた一松さんは、現地の日系法人に工場見学を打診しました。

しかし面談で先方に視察意図がうまく伝わらず、断られてしまいます。

先方からは『5Sの概念は一般化されているためMDHに合うかわからないし、そもそも古い概念だ。もっと現場を見て、他の解決策を考えたほうがいいのではないか』と厳しく指摘され、かなり落ち込みました。

自分のせいで上手くいかなかった。これではコンギーさんに合わせる顔がない‥‥。

逃げるようにその日は午後休を取ってお寺に行きました。そこでモヤモヤと考えていると、コンギーさんや工場スタッフの顔が思い浮かんで。このまま逃げちゃだめだ、まずは上手くいかなかったことをちゃんと伝えて打開策を考えよう、という気持ちになったんです。

オフィスに戻った一松さんは、面談の件を率直にコンギーさんへ伝えました。すると「時代遅れでも、一般化されていても、今の僕らにとって工場の整理整頓はとても重要なことなんだ。難しいと思うけど、一緒にがんばろう」という言葉をかけられます。

これを聞いた一松さんは、もう一度日系法人に連絡し、なぜ見学を実現したいのか、自身の熱意を伝えました。すると特別に工場見学をさせてもらえることになったのです。

5Sをカンボジアの人々に伝えて、仕事に活かしてもらおう、という僕の行動に相手が共感してくれて、見学が実現しました。これはとても嬉しかったですね。
 
工場見学には多くのスタッフが参加し、整理整頓されている工場を見て感激して、質問を重ねる姿が印象的でした。見学後はスタッフの意識がぐっと高まり、工場はどんどん整頓されていきました。

見学後、工場の整理整頓が進んだ

一松さんの活動について、MDHの代表・コンギーさんはこう振り返ります。

一松さんは知識を活かして工場の整備を進めてくれました。でも一番の成果は従業員のマインドを変えてくれたことです。ずっと課題だった整理整頓の意識が根付き、一松さんが帰国した今も工場が綺麗に保たれています。

最初は受け身だった一松さんですが、段々と周りのメンバーを巻き込んで、工場の課題解決に取り組んでくれました。一所懸命にコミュニケーションをとる彼の姿にスタッフも刺激を受け、工場全体の連帯も強くなったのです。本当に、素晴らしいリーダーシップを発揮してくれました。

MDHメンバーと(本人:写真中央)

カンボジアで見つけた諦めない自分

3ヶ月間の留職を通じて、一松さんは自身に大きな変化が起こったといいます。

これまでの自分は完璧主義で、失敗することへの恐怖から挑戦できなかったり、物事が予想通り進まないと諦めてしまったりしていました。けれど留職では5Sの意識浸透の取り組みが成功して自信がつき、失敗はただの分岐点だと思うようになりました。

正直、留職中はやめたくなった時もありました。でも何度も立ち直り、粘り強くやったら成果につながったので、諦めなくてよかったと心から思います。帰国後も自分の意思を強く持って、粘り強く挑戦していきたいです。

社会課題について意識するようになったのも、留職で生まれた変化の1つだといいます。

これまであまり社会課題を身近に感じていなかったのですが、留職を通じてカンボジアの人々が困っていることや、それが起きる社会的な背景について身を持って知ったことで、社会課題と自分のつながりを想像できるようになりました。今は”J-POWERで社会課題解決と事業をどう繋げていけるだろうか?” と、考え始めています。

個人的にはこの3ヶ月でクメール語を学んで現地のスタッフと仲良くなったり、カンボジアの歴史や社会課題を知ったりできたので、引き続きカンボジアとつながっていきたいとも思っています。

 留職で自律型人財の育成が加速

J-POWER /人事労務部人財開発室 の園田さんは、一松さんの留職についてこうコメントしています。

園田氏:J-POWER /人事労務部人財開発室

当社が留職プログラムに期待しているのは、留職者が職位にかかわらず自分が貢献できることや解決すべき課題を自分自身で考え、周囲を巻き込んでやり遂げることを体感し、その姿勢を職場に戻ってからも継続することです。一松さんは今回の留職で5Sの浸透という課題を見つけ、壁にぶち当たりながらも、最後は周囲を巻き込んでやり遂げました。

帰国後の最終報告会では、留職前に他人事のように語っていた当社の課題を「自分が中心となって変えていく」という頼もしい言葉を聞くことができ、今回の留職の成果は非常に大きかったと評価しています。今後も留職プログラムを通じ、多くの自律型人財を育成していきたいと考えています。

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クロスフィールズでは留職の新興国派遣を積極的に展開しています。2023年はカンボジアやインド、ベトナムなどにて行う予定です。

留職の詳細は以下をご覧ください。また、ご関心のある方はこちらまでぜひお問い合わせください。


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