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ジェンダーの意味とは?ジェンダーにまつわる歴史や企業の課題も紹介

ジェンダーフリーやジェンダーギャップなど、「ジェンダー」という言葉を耳にする機会が増えたと感じる方も多いのではないでしょうか。
ジェンダーはビジネス界でも重要度を増してきています。ジェンダー平等は世界的な潮流となっており、日本企業でも具体的な取り組みが求められている状況です。

今回はジェンダーの意味や歴史、日本企業におけるジェンダー課題について解説します。

ジェンダーの意味とは

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ジェンダーの日本語訳は「性」です。ただし、単に男か女かという性別を意味する言葉ではありません。ここでは、ジェンダーの定義と語源、セックス(性別)の違いや、ジェンダーを用いた言葉について解説します。

ジェンダーの定義と語源

ジェンダーとは、社会的・文化的役割としての男女の性、もしくは性差のことです。人間社会における「男らしさ、女らしさ」を意味し、男性と女性の関係性、さらに同性間における相互関係を意味します。

ジェンダーの語源はラテン語の「genus」で、西欧言語の文法上の「性」という意味もあります。たとえばフランス語の「genre(ジャンル)」はgenusが語源です。genreは男性名詞や女性名詞といった区別を表すフランス語文法上の「性」という意味です。

セックス(性別)との違い

セックス(sex)は生物学上の性でジェンダーと区別されます。生まれつきの性がセックス、社会や文化の影響による性差がジェンダーです。

セックスが生まれつき決まるものであるのに対し、ジェンダーは経験と学習を通じて形成されます。
自分の属する社会の文化や行動規範、または同じ集団に属する人たちから強い影響を受けて作られるのがジェンダーなのです。

ジェンダーという言葉の使われ方

ジェンダーは、男女の格差や区別をなくす取り組みの中で用いられることが多い言葉です。以下にジェンダーを使った言葉をいくつか紹介します。

ジェンダーレス:男女の区別がない状態、または男女の性差をなくそうという考え方を指します。
ジェンダーフリー:男女の性にもとづいた社会的な区別、あるいは仕事や役割の分担にとらわれず、誰もが平等で公平に行動できるようにする考えのことです。

ジェンダーギャップ:男女の違いで生じている格差のこと。世界各国の男女格差の指標に「ジェンダーギャップ指数」があります。
ジェンダーバイアス:男性か女性かで、個人の言動や志向に先入観や偏見を持つことです。
トランスジェンダー:身体上の性別と自己の性自認が一致していない人を指します。

ジェンダーの歴史

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歴史的にはジェンダーがどのように扱われ、ジェンダーの格差はどう是正されてきたのでしょうか。ここでは日本と世界におけるジェンダーの歴史を大まかに紹介しておきます。

日本におけるジェンダーの歴史

2020年の国立歴史民俗博物館の展示「性差(ジェンダー)の日本史」によれば、古代の日本では男女関係なく政治に参加できたと考えられています。男女の役割が定められるようになったのは律令制度の導入から。政治の変遷にともない、中世から近世にかけて男女の仕事の区別が明確になっていったようです。

明治以降では、男女格差の最たるものとして選挙権があります。1925年に普通選挙制度が導入されましたが、対象は25歳以上の男性のみでした。1945年、衆議院議員選挙法の改正により婦人参政権が認められ、女性も選挙への投票や立候補ができるようになったのです。

世界におけるジェンダーの歴史

世界各国の歴史で、男女の性差における社会の役割の違いや振る舞いの差異が見られます。近代の人権意識の高まりとともに、ジェンダー問題は世界的に取り組まれるようになりました。国連は女子差別撤廃条約を定めるなど男女間の不平等を是正する活動をおこなってきました。しかし、各国の文化や宗教、風習、政治情勢とも関係が深いため、ジェンダー問題への取り組み度合いは国ごとにバラつきがあります。

例えば、アメリカは1991年に性別や人種などが理由でキャリアアップできない「ガラスの天井」問題があることを政府が認めました。その後2008年におこなわれたILOの統計では、女性管理職の割合が42.7%まで改善しています。また2018年には、アメリカで初めてカリフォルニア州が上場企業に対し女性役員の配置を義務づける法律を制定し、ジェンダー平等への積極的な取り組みを見せています。

日本企業におけるジェンダー課題の意味

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日本企業が抱えるジェンダー課題は、主にジェンダーバイアスとジェンダーギャップの2つです。それぞれの解決すべきポイントを具体的に説明します。

企業に内在するジェンダーバイアス

「お茶くみなどの雑用は女性に」といったジェンダーバイアスを持ち続けている企業が日本には未だ存在しています。力仕事や危険な業務は男性に、繊細さが求められる作業は女性に、といった画一的な仕事の振り方は、ジェンダー課題の解決を妨げる「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」にとらわれている可能性があります。

アンコンシャスバイアスは具体的な業務付与や登用の場面で現れやすいのですが、無意識であるがゆえに気づきにくいものです。研修などを通じて、自分の中に潜むバイアスを意識するところから始める必要があります。

改善すべきジェンダーギャップ

日本企業が改善すべきもう1つの課題はジェンダーギャップです。世界各国の男女格差を測るジェンダーギャップ指数において、2021年の日本の総合スコアは0.656で156か国中120位でした。経済と政治のスコアが特に低いことが順位低迷の理由です。日本企業は女性の賃金格差や管理職比率の改善を行うなど、経済分野のスコアアップに取り組むことが求められています。

女性の管理職比率が上がらないのは、男性の育休取得率が低いことも1つの要因です。特に日本企業では女性が育休を取るべきという考えが根強く、女性が出産や育児を理由に昇進をあきらめざるを得ないケースもあります。一方で積水ハウスがまとめた「男性育休白書2021特別編」によれば、就活中の20代男女の73%が「男性育休制度に前向きな企業を選びたい」と答えています。男性育休制度の充実は、ジェンダーギャップを改善するだけでなく社会の要請にも応える取り組みとなるでしょう。

ジェンダーの意味を知り自社での取り組み加速へ

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社内のジェンダー課題を解決するには、ジェンダーの意味をよく知っておくことが大切です。歴史を紐解けば、ジェンダー平等の社会へ進んでいることが世界的な流れだとわかります。

昨今ビジネスシーンで話題となっているダイバーシティ&インクルージョンにおいても、ジェンダーは取り組むべき課題のひとつ。企業には率先したジェンダーギャップの解消への取り組みが求められています。ジェンダーの意味を理解し、自社にどのようなジェンダー課題があるか確認して、解決するための方針を打ち立てましょう。

NPO法人クロスフィールズは、社会課題体感フィールドスタディやVRワークショップなど「多様な人や価値観と出会う」事業を通じて、企業のダイバーシティ経営の加速を支援しています。具体的な取り組みは公式noteやホームページでご紹介しています。ぜひ参考にしてください。