CSRとは何? 意味と取り組みにより得られる企業価値を紹介
企業が社会的な責任を持つという定義を有するCSR。企業に求められる社会的責任の歴史を紐解き、なぜ現在、改めてCSRが注目を集めているのか理解しましょう。現在、少子高齢化に端を発するグローバリズムや、そのグローバル化によって求められるようになってきた多様性への理解など、CSR活動によって企業がどのような価値を得られるのかを解説します。
CSRの持つ意味とは
決して新しい言葉ではないCSRですが、そもそもどのような意味や定義が行われ、どのように使われてきたのでしょうか。最近注目されるESGやCSVとの関係性についても説明します。
■CSRとESGの違い
CSRと似た定義を持ち、企業サイトにおいてもCSRと一緒に情報開示していることも多いESG。環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉です。
CSRは、企業が社会的責任を果たすための活動を経営に取り入れるという「企業視点」であるのに対して、ESGは企業が社会的責任を果たす行為に投資するための「指標」という側面を持つことから「投資家視点」であるという違いがあります。
■CSRとCSVの違い
CSRと似ている英文字表記で「CSV」という言葉もビジネスの現場で頻繁に耳にするようになりました。
CSVとは「Creating Shared Value=共通価値の創造」の略称で、企業が社会課題や社会ニーズに対してビジネスを通じて社会と共有する価値を創造し、その結果、経済的価値も生まれることを指しています。2011年に「競争戦略論」で知られているハーバード大学教授のマイケル・ポーター氏がハーバード・ビジネス・レビューで提唱しました。
CSRが「企業が社会で存在するために果たすべき責任」であることに対して、CSVは「企業と社会がビジネスを通じて共に価値やメリットを享受する戦略」という違いがあります。
CSRが広がりを見せる背景とは?
1950年代にはすでにあった「CSR」が改めて注目されるようになった背景にはどのようなものがあるのでしょうか。CSRの歴史的な流れから、現在の状況までをまとめました。
■企業のCSRのこれまでの道のり
CSR自体は決して新しい概念ではありません。ニッセイ基礎研究所によるとCSRは1956年の経済同好会によるCSR決議を起点として5つのステージに分かれるとしています。
ステージ1:1960年代は公害問題によって、住民運動の活発化し、それに個別の対応をした時代。
ステージ2:1970年代のオイルショック後の企業の利益至上主義への批判があった時代。
ステージ3:1980年代にバブル経済を背景に大企業ではフィランソロピー活動が流行した時代。バブル崩壊と共に収束。
ステージ4:1990年代の地球環境問題として温暖化などの問題が表面化し、経団連において憲章が策定された時代。
ステージ5:2000年代には不祥事とともに企業倫理問題に発展した時代。2003年に多くの企業にCSR室が設立され、CSR経営元年と呼ばれるようになった。
■企業活動のグローバル化
日本の少子高齢化と人口減少を背景に、企業活動のグローバル化が加速。そのため企業のステークホルダーが国際化してきたことでCSRの策定にグローバリズムが導入されてきました。
多国籍企業が増え、例えば発展途上国において非人道的な労働を強いるような活動には非難が集まる事態にもなっています。そこで2010年11月に社会的責任の関する国際規格「ISO26000」が発効され、CSRのグローバルな価値観の重要性が高まったことも要因のひとつとして考えられています。
■待ったなしの環境問題対策
地球温暖化、気候変動、資源の枯渇、大気汚染などが、現実の世界で異常気象として災害を頻発させ、環境問題の解決は待ったなしという状況です。これらの問題が解決されていないことからCSRに求められる要件も重視されています。
環境問題に関する法律も厳しくなっていることから、環境対策を後手後手にしないためにも、環境に配慮した経営が必須となってきています。
■不信感の払拭
製品データの改ざんやリコール隠し、粉飾決算、産地偽装など企業の不祥事がたびたび起こることにより、消費者、株主、取引先、地域などを含めたステークホルダーの不信感が増大しています。
不祥事を起こさない企業体質を作るためにもCSR経営の重要性が増しています。
CSR活動によって得られる企業価値
CSR活動を進めることで得られる企業価値は多方向に広がりを見せます。
ブランド価値の向上やステークホルダーとの信頼強化、リスクヘッジ、社員の働きがいの向上、組織の基礎能力の強化などが挙げられます。
■企業のイメージアップ
企業がCSR活動を行い、情報を公開することで、企業の社会的な存在価値を証明し、企業ブランドのイメージアップが可能になります。競合他社との差別化を生み出して、優位性の確立も期待できるでしょう。
また企業に対する否定的なイメージや低評価への対応にもつながるため、リスクマネジメントという側面もあります。
■ステークホルダーとの関係強化
継続的なCSR活動に取り組むことで企業イメージがアップし、顧客や仕入先、従業員などステークホルダーからの信頼が増大します。特に株主や投資家からの支持を得やすくなるでしょう。
ステークホルダーとの関係が強化されることによって、円滑な企業活動や利益向上へと繋げることも可能となります。
■コンプライアンス体制を強化する
CSR活動を取り入れる企業は、コンプライアンスを遵守する企業体質に変化することが期待されます。不祥事を起こさない企業へ変化することでリスクヘッジとなるでしょう。
コンプライアンス違反を防止するための社内ルールの徹底や、個人情報の保護、業務マニュアル・ガイドラインの徹底などが企業活動の基礎となることから、ステークホルダーとの信頼関係が強化されます。
■従業員満足度向上
CSRへの取り組みが進むと社内において社会貢献に向けた素地が生まれます。従業員は自分の仕事が社会貢献に結びついていることを実感することで自然と働きがいが高まるでしょう。これにより企業は生産性が高まり、企業の成長へと発展します。
また学生や求職者にもプラスのイメージとなり、採用広報を優位に進めることにも可能に。
■組織や経営の基礎を強化
CSRの取り組みが進むことで経営陣だけではなく、現場の社員に向けた企業理念の再確認と周知に効果的です。
社員が一丸となり、重要課題に取り組む姿勢の基礎作りが進むことで、縦割りではなく、横断的な組織作りにも寄与。
この効果によって社内イノベーションも生まれやすい企業体質へと変化します。
CSR活動の意味を理解して企業価値を高めよう
CSRはSDGsの広がりとともに、またESG経営の浸透と並び改めて価値が高まってきました。従来CSRは「企業が利益を得た中で社会に還元するためのもの」という位置づけでした。しかし、現在はCSRをより戦略的に捉え、かつて「社会貢献は企業の利益とトレードオフされるもの」という概念だったことを覆す存在へと進化しています。
新しい時代のCSRを理解して企業価値をどのように高めるべきか、検討してみましょう。
NPO法人クロスフィールズは、社会課題の現場と企業で働く人をつなぐさまざまな事業を行っています。具体的な取り組みは公式noteやホームページでご紹介しています。ぜひ参考にしてください。