見出し画像

NECの役職者がルワンダで体感した「社会課題の現場に越境する価値」

NECのシニアディレクター吉尾理さんは、2019年にルワンダで実施したプログラム「Social Innovation Mission(以下、SIM)」に参加しました。これは日本の大企業、スタートアップ、NPO等の役職者層が1週間にわたり社会課題の現場を体感し、これからのビジネスのあり方と自身の志を見つめ直していくものです。
 
ビジネスを通じて社会課題が解決されている様子をルワンダで目の当たりにし、自身の考え方が大きく変わったという吉尾さん。プログラム後は他の社員にも社会課題の現場に越境する経験を提供されています。そんな吉尾さんに、SIMで起こった自身の変化やその後の行動についてディレクター原田がお話を伺いました!(SIMルワンダの様子はこちら

インタビュイー/吉尾理さん:デジタルプラットフォームビジネスユニット
ビジネスアプリケーションサービス統括部 シニア・ディレクター
’18年にSIMルワンダへ参加

インタビュワー/原田悠子:クロスフィールズ ディレクター
SIMルワンダの企画〜運営にも携わった

ルワンダで体験した衝撃の連続

――まず、SIMルワンダに参加したきっかけを教えてください。

 吉尾:一言でいうと「社会課題起点で新規事業を創るため、新しい視点を獲得したかった」からです。当時から事業開発に取り組んでいたのですが、こと、社会課題起点でというところに行き詰まりを感じていました。

「社会価値を創造するためには、社会課題解決と自社のIT技術を結びつけてソリューションを提供しなければいけない」と頭で理解はしていても、具体的にビジネスにつなげるためにキーとなるポイントがかわからない状態でした。 

実際に現場では失敗しない事業だけを進める、また、根本的には決められた業務ばかり行う風潮みたいなものを感じていました。所属していた事業開発チームで、”今後、ITを通じて社会にどのような価値を提供できるか?” など議論しても、なかなか会社として取り組むべきアイデアが出てこない。そんな時にSIMルワンダを知り、現状打破のきっかけになりそうだと参加しました。 

とはいえ、渡航するまでは「本当に社会課題とITソリューションは結びつくのか?」「事業として成り立つのか?」と、半信半疑でしたね。でも実際に現地でイノベーションを目の当たりにすると、この気持ちは大きく変わりました。 たとえばEXUUSというスタートアップを訪問した時のこと。彼らはモバイルマネーの技術を活用して電気のない農村部でもスマホやガラケーで金融サービスを受けられる事業を展開しており、これには本当に驚きました。日本より進んでいて、まさにリープフロッグ現象だ!と。

その他にも様々なスタートアップを訪問し、テクノロジーを活用した課題解決の様子や企業とソーシャルセクターの協働モデルを目の当たりに。本当にこれまで見たことない事例ばかりで、衝撃の連続でした。 

プログラムではスタートアップをはじめ様々な団体を訪問 

プログラムで180度変わった視点

――SIMの現地訪問で得た刺激は、どのような変化へとつながっていきましたか?

吉尾:プログラム中は現地で感じたことを他の参加者と共有し、内省を深める時間が多くあったので、そこで自分自身や自社について振り返り、現地での体験や感じたことと結びつけていきました。 

すると「これからは自分たちで社会の課題やニーズを発見し、主体的にビジネスを生み出していくことが大切だ」と気づいたんです。これまでは市場や顧客から提示されているニーズや課題に対してソリューションを提示する姿勢で仕事を行ってきたのですが、これを180度変えなければ、と。 

学びを言語化し、他の参加者とシェアしていく吉尾さん

 また、ルワンダの起業家の活動を間近で体感できたことで、「こういった視点で社会課題を起点にビジネスを創れるのか」という発見にもつながりました。これまでぼんやりと捉えていた「社会課題」の解像度があがり、「日本の場合は人手不足という社会課題に対して、自社のITソリューションで解決策を提示できるかもしれない」と考えるようになりましたね。

プログラム参加後から現在まで、製造や小売業の顧客にIT導入による業務効率化を提案・支援し、最先端のITツールを活用して新しいサービスを生み出すチームに所属しています。ここで大切にしているのが、顧客の課題発見からソリューションの提案まで自分たちで行うこと。

たとえば人手不足に悩む工場や製造業に対して、彼らの課題の発見から始め、ITによる業務効率化を提案し、解決へとつなげています。どのような課題があり、それに対してどう自社のソリューションを活用したら解決できるのか……答えのないなか、チームや顧客と議論を深めて事業を創るプロセスが面白いですね。

社会課題の現場への越境経験で組織を変える

ーープログラム参加後、若手社員が社会課題の現場に越境する機会も生み出していましたよね。その背景を教えてください

 吉尾:ルワンダへの越境を通じて、たとえ海外で起こっている社会課題でも何らかの形で自分とつながっていると実感したんです。課題に対するソリューション自体はそのまま自社で応用できなくても、根本的な考え方や視点は取り入れられるし、それによって新規事業を創っていけると実感しました。 ただ、こういった発見は現地に行かないとわからない。

自分みたいに管理職で越境するのもいいのですが、より若い時期からこの感覚を養ってほしかったので、クロスフィールズさんや他社と合同で若手社員向けのプログラム立ち上げに携わりました。これは異なる企業の参加者3-4名がチームとなり、国内を舞台に社会起点で事業アイデアを創出する、というプログラムです。 

 参加した社員は他社の参加者とチームで日本の地方が抱える課題を掘り下げ、その解決に向けた事業アイデアを創っていきました。このプロセスで、彼らは社会起点で事業を考える視点を得たり、自身の関心を見つけたりしたので、やはり越境して「社会」とつながる経験は価値があると感じました。

こういった経験を通じ、社会と事業をつなげて考えられる社員が増えると、組織全体の変革に変わっていくのだと期待しています。ある意味、自分の仲間を増やす取り組みなのかもしれません。

ソーシャルリーダーシップアカデミーにも部下を派遣

――今年よりクロスフィールズが実施しているソーシャルリーダーシップアカデミー(以下、アカデミー※)にもご自身の部下を派遣されていますが、どのような期待がありますか?

吉尾:アカデミーに参加している社員には、社会課題解決と自身の事業を結びつけて考えるきっかけにしてもらうことを期待しています。

※ソーシャルリーダーシップアカデミー:社会課題を自分事として捉え、自社でのサステナビリティ実現を推進する人材育成を目的とした半年間のクロスフィールズが運営するプログラム。複数社混合の3-4 名がチームとなり、地域社会の課題解決に取り組んだ後、自社でのサステナビリティ推進プランを策定する

アカデミー含めて、社会課題の現場に越境してもらうからには、「どうしたらこの経験を自分の仕事に活かせるか」をしっかり考えて、自社での行動につなげてもらいたいです。おそらく単純にはつながらないのですが、それでも目の前の業務だけではなく、周囲・会社全体・お客様と一緒に考えられるほど視野を広げられることを期待しています。

そうしたら、きっと個人の成長と会社の事業への寄与が生まれてくると思います。また、現地で課題解決に取り組む方々や他社の参加者など、普段は出会わない社外の人々から刺激を受けてさらに視野を広めてもらいたいですね。そうすることでこれまで気づかなかった自社の可能性に気づいて、新たな事業の創出にもつながると思っています。
 
――ルワンダでの経験を様々な形で組織に波及させている吉尾さんですが、今後の展望を教えてください。
 
吉尾:当社の社会起点によるビジネス創出は、まだ成長過程にあると感じています。でもここ数年の取り組みを通じて、実現に向けたアプローチは沢山あるし、やり方によっては組織も社会も変えられると実感しています。

たとえば人権でも環境問題でも、それに関わる人々がアプローチを少し変えたり、視野を広げたりすることで、社会に大きなインパクトを起こせる

特に当社のような大企業が社会に与える影響は大きいですし、率先して行動を起こしていくことで、本当の意味でのサステナビリティを実現できると思っています。

***
吉尾さんが参加したフィールドスタディの様子は、以下よりご覧いただけます。

社会課題体感フィールドスタディについては、以下よりご覧ください。