CFメンバーが先生に?!子ども向けオンライン授業で気づく教育の可能性
クロスフィールズは2022年8月、ベネッセが実施するオンライン対話型レッスン「みらいキャンパス」にて、社会課題を身近に感じてもらう全4回の授業を小学校1~2年生に行いました。団体としても初めての試みのなか、「先生」として試行錯誤しながら授業を一から作り上げたメンバーの田中、花井、渡辺の3名が、今回の取り組みで得た気づきや印象的だったことを語り合いました。(聞き手:広報・佐藤)
子どもと世界をつなぐきっかけづくり、有志で初挑戦
――はじめに、今回の授業について教えてください。
花井:小学1~2年生を対象に、夏休みの期間にオンラインで全4回の授業を実施しました。メンバー3人とも海外で過ごした経験があったので、それぞれが思い入れのある国について話し、参加した子どもたちに感じたことを共有してもらうという内容です。僕は小学5年の一年間を過ごしたオーストラリア、田中は青年協力隊の派遣先だったジブチ、渡辺は青年海外協力隊の派遣先だったボリビアと幼少期から青年期まで共に過ごしたコソボの友人の話をしました。
――今回の取り組みは団体内のメンバーから有志を募る形で実施されましたよね。通常の業務もあるなか、手を挙げた理由は?
花井:僕はもともと教育分野に興味があったので、話が来た時に「これだ!」と応募しました。大学院ではグローバルな教育課題を研究していたり、前職のメーカー勤務時代には、全寮制の中高一貫校に企業の若手人材を派遣するプログラムに参加したりしていました。そういった経験から「人の可能性」に寄り添う仕事をしたいという思いがどんどん強くなって、今回も迷わず応募しました。
田中:私は子どもたちにとって何かしらのきっかけになればいいな、と思って手を挙げました。アフリカ、しかもジブチのことなんて知っている子はきっと少ないので、もっと知ってほしいという思いもありましたね。
渡辺:私はとにかく楽しそう!と思って(笑)。「はい!やりまーす!」って手を挙げていました。
クイズに白地図、イラスト入りシート……飽きない仕掛けを試行錯誤
――これまで企業の社員などにプログラムを実施してきたクロスフィールズにとって、小学生向けの授業は初めての試み。戸惑うことも多かったのでは?
田中:たしかにそうですね。大人と違って、小学生は飽きたらすぐ画面からいなくなってしまう(笑)。ベネッセさんとの初回のミーティングで小学生に授業している様子を映像で見せてもらったのですが、その時は正直「無理かも……」と思ったほど。でも3人で必死に考え、子どもたちを飽きさせない仕掛けを盛り込んでいきました。
渡辺:「バカ、はスペイン語で牛って意味なんだよ」とか、子どもが喜びそうなクイズを挟んだり、スライドも1スライド一言ぐらいの大きな文字で作ったりと、いろいろ試行錯誤しましたよね。
田中:クイズはウケたよね。「じゃあ『アホ』はスペイン語で何を意味するしょう?正解はニンニクでしたー」とか!
渡辺:なかでも工夫したのが、授業で使ったワークシートです。世界のことを知ってハイ終わり、ではなく、これからも世界とつながってほしいなという思いがから、アンテナが立つように考えた仕掛けです。
ワークシートは2つあって、ひとつは白紙の世界地図。授業やその後に知った国に色を塗っていくというものです。最初は真っ白だった地図も、最終日に近づくにつれてどんどんカラフルになっていきました。
花井:もうひとつのワークシートは、授業で感じたことを書き留める「きもちのはこ」というシートだったね。このシートにはまえまえ(渡辺)がメンバーのイラストを書いたりして。そういう手作り感があったことで、僕らの気持ちも伝わったのかなと思います。
花井:大人向けの場合は興味のないプレゼンでも一通り我慢して聞いてくれるけど、子ども相手だとそうはいかないので、事前の作りこみは相当頑張りました。でも最後まで反応が予想できない怖さもありましたね。なので、本番は「これだけは伝えたい」という部分を大切にし、あとは「自分たちも楽しもう」という気持ちで臨みました。
渡辺:本番の時には(NHK教育テレビの番組の)「おかあさんといっしょ」のお姉さんの気持ちで!とみんなでテンションを上げていました(笑)。
「お姫様のランチはワニの肉?!」一人ひとりが各国の文化を想像
――実際やってみて、子どもたちの反応はどうでしたか。
田中:印象的だったのが、参加した女の子が授業後に「お姫様が新婚旅行でボリビアに行って、そこでワニの肉を食べる」という物語を作ったこと。授業でボリビアではワニの肉を食べるという話をしたので、きっと印象に残ったんだなと(笑)。
この話を聞いたとき、その子が「海外=英語の国」ではなくて、ボリビア、オーストラリア、ジブチ、とそれぞれの国を想像できるようになったんだなと嬉しかったですね。実際に各国で過ごしたメンバーの生の声だからこそ、現地の生活や文化、食べ物、季節の違いなどを伝えられたのだと思います。
渡辺:私は4回目の授業でコソボ紛争の話をしたんです。「紛争」の言葉の意味や紛争によって引き起こされることなど難しいテーマも避けず、あえて砲撃された家や負傷した友人が治療されている時の写真も使いました。どうやったらわかってもらえるか、本当に迷いながら言葉を選んで伝えました。
授業後、子どもたちに感想を聞いたら「痛そう」「かわいそう」という答えが返ってきたんです。自分がそこに住んでなくてよかったと思うのではなく、紛争地域にも住んでいる人がいて、それぞれの生活があるということに気付き、想像してくれたんですよね。これは嬉しかったな。
花井:まさに「社会課題を自分事化する人を増やす」という、僕らクロスフィールズがやりたかったことだよね。僕は作家の司馬遼太郎の「目の前で転んだ人がいた時に、寄り添う気持ちを育むことが大事」って言葉が好きなんですけど、今回はまさにそれが実現した瞬間に何度も立ち会えました。
――4回の授業を通じて、メンバー自身にも色々な気づきがあったんですね。
花井:子どもたちには好奇心のスイッチが沢山あって、そこから得た気づきもありました。例えば僕はオーストラリアについて話して、日本と季節が逆だと伝えるために夏のサンタクロースの写真を見せたら「日焼け止めは塗るの?」という質問が出て、ここでみんな盛り上がっていました(笑)。
僕らが想像していなかったポイントに好奇心のスイッチがあったのは驚きましたね。
渡辺:誰かが話している途中でも、スイッチが入った他の子が話し出しちゃったり(笑)。
花井:そうそう。だけどこれが大人向けと違ってすごく新鮮で。年齢を重ねると周囲の空気を読むようになってしまうけれど、子どもは自分の興味や関心をどんどん探求していく。僕自身、その姿をいつの間にか忘れちゃったよな、とハッとさせられたし、子どもたちの姿にリスペクトの感情が生まれました。
未来を育む種まき、新規事業として2022年12月にスタート
――企業研修などの大人向けの教育ともまた違うんですね。クロスフィールズとして今後、どんな風に子どもへの教育分野に貢献していきたいですか。
田中:自分の幼少期を振り返った時、私は世界の社会課題の最前線で働く人を知る機会はほとんどありませんでした。大学に入り、海外旅行をして日本以外の国に興味を持ち、そこから徐々に社会課題解決の世界も知っていきました。
田中:幼い頃に世界の国々の様子や、社会課題の解決法を知るきっかけがあれば、その時にまかれた「種」がやがて芽になるかもしれない。クロスフィールズはいろんな社会課題に取り組む人とたくさんつながっているので、このネットワークを活かして子どもたちに種まきをしていきたいです。
花井:教育って「教える」より「育む」ほうが大事だと思っています。「こうなりなさい」ではなく、「いつか芽が出ると良いな」と子どもたちの可能性を信じて種まきをしていく。僕らの役割はこういった種まきの場を作ることだと思っています。
渡辺:団体としても教育分野にも力を入れていくなか、ぜひ台風の目となりたいですね。限られた子どもではなく、日本各地や世界中の子どもたちが交流できる学び合いの輪を広げていきたいです。
花井:まさに今年12月からスタートする「CROSS BRIDGE」で目指すことですね。これは日本各地の高校生30名が世界の社会課題とつながり、仲間と一緒に学びを深めていくもの。海外の社会課題に取り組むリーダーや現地の方々と実際に対話し、自身の探究心を広げてキャリアについて考えるきっかけを提供していきます。
高校生向けプログラムはクロスフィールズにとって新たな挑戦、僕自身とてもワクワクしています。このプログラムが土壌となり、いつか個性あふれる芽が出ると嬉しいな、という気持ちでメンバーとプログラムの企画を作り上げています。どんな内容になるのか、ぜひ楽しみにしていてください!
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現在、CROSS BRIDGEでは参加する高校生を募集しています。
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