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留職受け入れ10年!インドのパートナー団体が語る「留職の価値」

インドで貧困層向けの電力供給事業に取り組むE-Hands(イーハンズ)は、2014年から現在まで7名の留職者を受け入れ、留職以外でもクロスフィールズと様々な協働をしてきました。

今回はE-Hands代表・Raghu(ラグーさん・以下、敬称略)より、留職を受け入れたきっかけやクロスフィールズとの協働を通じて生まれた変化などを伺いました!

インタビュイー

Raghu Chandrasekaranさん
長年にわたり自動車、医療、IT等の産業に携わった後、2010年にE-handsを創業。
インドの農村部に安価で持続的なエネルギーを供給する事業等を展開。
2014年より留職プログラムを通じてクロスフィールズと協働している。

――E-Handsについて教えてください。
ラグー:E-Handsはインドの農村地帯に住む貧困層向けにマイクログリッドシステムを提供する社会的企業です。2010年に創業し、現在50名のメンバーが働いています。私はもともとIT系の企業や自動車業界などのビジネスセクター働いていましたが、より社会に意義のある事業を生み出したいとE-Handsを創業しました。
 
事業内容は主に農村地帯へのマイクログリッドシステム提供を行っています。マイクログリッドとは太陽光や風力など自然エネルギーによる発電と通常の送配電システムを組み合わせ、可能な限りエネルギーの自給自足を行う仕組みです。

インドの農村部は未電化あるいは電力が限られる地域がいまだに多く、マイクログリッドを導入することで経済的かつ環境負荷も低いエネルギー源の提供を実現しています。

E-Hnadsが農村部に設置した太陽光発電システム

留職者は団体の発展に欠かせない「新たな視点」

――留職を受け入れたきっかけを教えてください。
ラグー:最初の留職者は大手電気機器メーカーのエンジニアでした。2014年のことです。それ以前にボランティア受け入れ自体は経験があり、組織が持続的に発展するうえで外部リソースは重要だと認識していたので、まずは実験的に受け入れました。
 
留職者には風力発電の羽の部分をデザインしてもらったのですが、これが成功して後に事業化しました。この経験で「留職者の質はとても高く、E-Handsの課題解決や新規事業の加速につながりそう」と感じたので、継続的に留職者を受け入れることになりました。

E-Handsは社会的インパクトを生み出す企業です。できるだけお金を事業にまわすため、役職者の給料はマーケットのおよそ半分、私自身は無給で業務にあたっています。それでも団体の取り組みに共感してメンバーが集まってくれています。そのため、日本企業でエンジニアや営業など多様なビジネス経験を培ってきた留職者は、私達にとって貴重な人的資本になっています。

留職はマンパワーだけでなく外部の視点を持ち込んでくれることも期待しています。留職者が独自の視点で新規事業を生み出したり、既存事業の改善に取り組んだりしてもらいたいです。実際、これまでの留職者は様々なアイデアをもとに事業に取り組んでくれました。

留職者たちの貢献が社会課題解決の加速に

――留職者を受け入れてどのような変化が起こりましたか?
ラグー:E-Handsが創業時から取り組む社会課題、つまり「貧困層へ電力を届けること」というミッションに歴代の留職者はみんな貢献してくれました
 
ある留職者は、ヒマラヤ山脈に近い地域における太陽光発電システムの改善に尽力してくれました。非常に辺鄙で便利とはいえない環境でしたが、彼は数日にわたり農村へ滞在し、発電システムを構築しました。その後、ヒマラヤ地域における太陽光発電を使用したマイクログリッドシステムの事業化につながったのです。現在、ヒマラヤでは12の地域でシステムが導入され、人々の生活を支えています。

またある留職者は、村に滞在してマイクログリッドシステムの蓄電池を安全に保管する仕組みを提案しつつ、村のマイクログリッドで生み出された電力を活用した新規事業のアイデア創出も行ってくれました。
 
その他にも試験的にシステムのプロトタイプを作成したり、新規事業のトライアルをやったりしてもらうことも多くありました。これらの全てが事業化された訳ではありませんが、そういった新規の試みは私たちだけではできないので、取り組み自体が有意義だったと感じています。

インドの社会課題に関心を持つビジネスリーダーを増やしたい

――留職者を受け入れる際に心がけていることはありますか?
ラグー:E-Handsのメンバーには、留職者からビジネスのメソッドやデータ解析のスキル、メンバーを巻き込んで協力する姿勢などを学ぶと同時に、インドの文化や慣習、社会課題について共有するように伝えています。
 
なぜなら、もし留職者が日本企業でより影響を生み出せる立場になった時に彼らの頭の中にインドへの社会課題に関する知見や意識があれば、何か一緒に生み出せるのではないか……と考えているからです。

日本はインドの発展にとって重要な国です。そのため日本のビジネスリーダーとなる方々がインドの社会課題を体感し、日本に持ち帰ってもらいたいと思っています。さらに言うと自身の周りに発信してより多くの人にインドについて知ってもらい、インドに関心のある日本人を増やしてほしいですね。

E-Handsメンバーと太陽光パネルを設置した農村の方々

――最後に、クロスフィールズへの期待を教えてください!
ラグー:今後も継続的に留職者を受け入れ、E-Handsが対峙する課題解決やゴール実現をエンパワーしてもらいたいです。日本企業と強いネットワークを持つクロスフィールズとは留職以外でも協働し、新しいことができると嬉しいです。すでにいくつかアイデアがあるので、ぜひ継続的にディスカッションしたいです。

インタビュー後記

クロスフィールズに加入して4年、はじめて留職の海外派遣に同行させてもらいました。E-Handsのメンバーと話すなかで「ぜひ代表のRaghuさんにインタビューしたい」と思い立ち実現した今回のインタビュー。

話を聞くなかで、歴代の留職者の貢献がしっかりと団体の成長につながっていることを感じました。このようなインパクトは、E-Hands以外でも生まれているのでは……と想像しています。今後もパートナー団体の方々の声も届けていきたいです。(広報・松本)