食用コオロギの生産・販売に取り組む(株)エコロギー代表・葦苅さんは2019年に学生留職(*)に参加し、2021年には逆に留職者を受け入れる立場になりました。
エコロギーは2017年に創業。当時は大学院生だった葦苅さんが、昆虫食の普及で食糧問題と環境問題の解決をめざして事業をスタートしました。葦苅さんは2019年に学生留職に参加し、カンボジアで活動。その後もエコロギーは事業拡大を続け、2021年に今度は留職者を迎える立場となり、同年6月から翌年2月までの9ヶ月にわたって損保ジャパンの社員・大谷さんを受け入れました。
大谷さんの留職は、エコロギーにどんな変化を生み出したのでしょうか。今回の留職レポートは、受け入れ側であるエコロギー代表・葦苅さんの視点でお届けします。
(*学生留職とは経済産業省「未来の教室」の実証事業として、2019年に学生起業家3名を新興国のNGOや社会的企業に派遣したものです)
学生で起業、カンボジアへの留職に参加
エコロギーはコオロギなど昆虫資源を食糧として活用し、サステナブルな食糧生産サイクルの実現を目指すベンチャー企業です。カンボジアを拠点にコオロギを生産・加工し、日本で商品化と販売を行っています。
創業2年目のタイミングで葦苅さんは学生留職に参加。そのきっかけをこう語ります。
「自分にとって留職は次のステージに進む旅のはじまりだった」という葦苅さん。留職を通じて現地のコオロギ農家と出会い、それがエコロギーの事業拡大につながったそうです。
留職者の受け入れに踏み切った背景
生産システムは整ってきたものの、人員不足などの影響でなかなか日本向けの商品開発と販売を加速できない……。葦苅さんがそんな課題を抱えていたとき、留職者の受け入れをクロスフィールズから打診されたといいます。
そして損保ジャパン・大谷さんを受け入れることに。
こうしてエコロギーは2021年6月から9ヶ月間、損保ジャパンの大谷さんを受け入れることなりました。
営業だけど、営業するものがない?
留職者の大谷さんが任されたのは日本での営業戦略でした。とはいえ、留職を開始した頃はまだ商品を開発しているフェーズ。大谷さんは営業以外の業務も担当することになりました。当時の様子を、葦苅さんはこう振り返ります。
未知の業界で初めての業務に取り組むことになった大谷さん。留職当初はミーティングでの発言も少なく、未経験の分野で行動することに不安を感じている様子だったようです。
しかし、だんだんと自ら仕事を作っていくようになり、商品のニーズ調査に向けた消費者インタビューから、コオロギをカンボジアから輸入する際の貿易業務まで、とにかく何でも取り組んでいきました。
と、葦苅さんは振り返ります。
大谷さんの活躍もあり、留職開始から半年が経った頃にコオロギ製品の試作が完成。そこから営業活動も本格化し、エコロギーは複数のパートナー企業を見つけることができました。
元留職者が受け入れる立場になってわかったこと
「留職の受け入れは私たちの組織にとってなくてはならない転換点になった」という葦苅さん。現在、2名目となる留職者を受け入れています。
大谷さんが徐々に経営視点を得ていったことで、事業戦略にも変化が起きたようです。
留職者と受け入れ先、どちらも経験した葦苅さん。留職の可能性についてこう語っています。
編集後記
「留職の経験者が、留職者を迎える」という事例はエコロギーが初めてでした。留職者だった葦苅さんだからこそ、留職者と同じ目線で対話を重ねられたのではないでしょうか。クロスフィールズとしてもさまざまな形で協働を続け、エコロギーの掲げるビジョンの達成に伴走していきたいと思いました。
なお大谷さんによる留職レポートと、葦苅さん×クロスフィールズ久米澤が学生留職を振り返った記事はエコロギーのnoteにて公開中です。合わせてぜひご覧ください!