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ハウス食品社員が食に関わるベンチャーに越境!留職者×受け入れ団体インタビュー

ハウス食品の君塚さんは、2022年5月から翌年 2月まで、ベンチャー企業のフードピクトに留職しました。「より良い食体験をすべての人に届ける」ことを目指す同社で、プロジェクトリーダーとして新規事業の開発に携わった君塚さん。

今回は留職中やその後の変化について、君塚さんと受け入れ先のフードピクト代表・菊池さんから伺いました!聞き手は本プロジェクトを担当したクロスフィールズ渕上です。(以下、敬称略)

インタビュイー

君塚さなえさん(中央):2012年ハウス食品入社。
大阪・東京・埼玉での家庭用の営業、業務用(CVS)の開発営業などを経て22年に留職。
現在はハウス食品グループ本社国際事業企画部 市場開発課にてチームマネージャーに

菊池信孝さん(写真左):フードピクト代表
留職の受け入れは2020年に続いて2度目となった

インタビュアー
クロスフィールズ渕上:プロジェクトマネージャーとして君塚さんの留職を担当

留職先で新規事業のリーダーに!うまくいかない日々を変えた一言

――君塚さんが留職に参加したのは、入社10年目の時でしたね。なぜそのタイミングで留職しようと思ったのでしょうか?

 君塚:入社してから様々なマーケットにて家庭用の営業・業務用(CVS)の開発営業などを担当していました。留職のきっかけは、チームマネージャーになるための試験を受けるタイミングとなったとき「このまま昇進していいのだろうか?」と思ったこと。

自分が本当にやりたいことを見つけたいと考えていた時、留職の公募を見て申し込みました。留職は新しい人々との出会いを通じて自分の可能性を広げる機会になりそうだと思ったのですが、実際に派遣先のフードピクトで本当に多様な人に出会えました。

菊池:たしかに当社のメンバーは、食に対するこだわりが強くて経歴も多様なので、君塚さんには刺激がかなりあっただろうなと思います。しかも大半がプロボノやインターンとして参加しているフラットな組織なので、留職初期の君塚さんは自身のリーダーシップを発揮することに苦戦していたのを覚えています。 

君塚:フードピクトではリーダーシップを求められる場面が多くて、私にとって挑戦の連続でした。特にプロジェクトリーダーとなり、チームを任された新規事業では、「生産者・料理人・消費者をつなげ、野菜が育つところから商品が生まれ、そして消費者のもとに届くまでのプロセスをひとつのストーリーとして描き出す」という体験型プログラムをゼロから企画して事業化まで取り組むことに。でも、最初は全然思うように進められませんでした。

留職前半を振り返ると、フードピクトのメンバーと自分を比べて自信がなかったり、企画がうまく進まず、成果が出ないことに焦ったりしていました。「メンバーはどう考えるだろうか?」と悩むばかりで自分の意見を発信できなかったし、コミュニケーションも取れていなかった。 

そんなある日、メンバーの一人から「もう自分がこのプロジェクトに参加する意味が見いだせない」と言われてしまって。周りを見渡すと他のメンバーのモチベーションも下がっていたんです。

すごくショックでヘコみましたが、振り返ると「もっとメンバーの意思を反映して業務を依頼したり、自分の意見を発信したりするべきだった」と気づいたんです。そう気づいてもなかなか動けなかった私に対して、他のメンバーから「あなたが物事を決めて進めないと、新規事業自体がなくなっちゃうよ」と言われて、覚悟が決まりました

渕上:その時から君塚さんは、自分の意思を発信するように変わっていったことを覚えています。1on1で「来週はこんなアクションを起こしてみよう」と決めて、最初は小さな行動を重ねていきましたよね。

君塚:渕上さんとの1on1では悩みも含めて話すうちに、「こうしたらいいんじゃないか」という次のアクションが見えてきたり、「新規事業について一番考えているのは私だから、間違いを恐れずに発信しよう」という自信につながったりしました。そうしたら段々とチームメンバーとのコミュニケーションもうまくいき、新規事業も形になっていきました。 

フードピクトに生まれた変化

――留職を経て、フードピクトにはどのような変化がありましたか?

菊池:留職者の受け入れは君塚さんで2回目でした。留職者には即戦力として活躍してくれることを期待していて、君塚さんには大型の新規事業のリーダーを含め、様々な業務を担当してもらいました。 

その結果、君塚さんが立ち上げた新規事業の体験型プログラムはその後も規模が大きくなり、翌年には6-7件ほど案件化しました。今では当社の主力事業となっており、今後もさらに拡大していく予定です。

君塚さんが立ち上げた事業は「Plant Journey」として展開中 

菊池:留職で組織全体にも変化が生まれました。君塚さんの留職時、当社のメンバーはみんなプロボノやインターン、業務委託で、正社員は私だけでした。でも君塚さんはフルタイムで私の右腕的なポジションとして活躍し、おかげで新規事業が大きく成長しました。

この経験をへて、今ではよりコミット度の高い人材が参画し、それぞれが事業をまとめる立場として活躍しています。

君塚:自分が携わった新規事業がどんどん拡大しているのは本当に嬉しいですね。家庭用商品の営業時代は完成している商品ありきでしたが、フードピクトでは1つのプログラムに関わる全ての方々、つまり生産者さんからお客様までつながりながら、内容の企画から運営まで担当し、事業全体を体感できました。

芽生えたリーダーシップと改めて感じる「食」の可能性

――留職後の業務について教えてください

君塚:海外輸出のための製品企画を担当する部署で、チームマネージャーとして働いています。各国の規制に合わせながら、当社としてこだわる「おいしい」が両立できる製品の開発に取り組んでいます。

正直、留職前はチームマネージャーとしての業務にあまり興味がありませんでした。でも留職を経て自分に自信がついたし、自分の意思を大切にしながらもっと挑戦してみようと思えるようになりました。

今はチームマネージャーとしてチームメンバーの意思も尊重しながら業務を割り振りしつつ、自分の意見を伝えながら企画業務を進められていると感じています。留職を経て「誰かと自分を比べても意味はないし、自分の意思はちゃんと伝えよう」って思えるから、判断や行動のスピードが上がったのだと思います。 

君塚:フードピクトでの活動を通じて食に携わる仕事に改めて誇りを持てたことも、留職で生まれた変化の1つです。留職中に物事がうまくいかず落ち込んでいたある日、菊池さんがごはんを作ってくれたことがありました。

私の体調に合わせて作ってくれたことが嬉しかったですし、とても美味しくて元気になれたんです。こんなふうにフードピクトでは「誰かと一緒に食卓を囲み食事をすることで、人と人とのつながりが生まれて幸せになる」という経験を仕事で何度もしたので、食が持つ可能性を改めて実感できました。 

留職は人生のターニングポイントになるかもしれない

――どのような人に留職の参加を勧めたいですか?

君塚:仕事に実直に向き合っているけど、自分のやりたいことがわからなくて探し続けているような人に勧めたいです。私の場合は、留職後すぐに人生がガラっと変わった訳ではないのですが、留職で自分が大切にしたい価値観を見つけたり、考え方が変わったりしました。もしかしたら、長い目で見ると「実は留職が人生のターニングポイントだった」と気づくかもしれません。社内公募などで留職を見て、参加を迷っている人にはぜひ挑戦してみてほしいです。

渕上:菊池さんに質問ですが、留職の受け入れに関しては、どのような団体に勧めたいでしょうか?

菊池:留職者を受け入れる観点では、マッチングが大切なポイントでした。ちょうど新規事業に注力するタイミングに君塚さんが来てくれて事業を加速できたのですが、このコーディネートあっての成果だったと感じています。

また、君塚さんとは事前面接も実施し、「食を通じて人を幸せにしたい」という君塚さんの気持ちと当社の取り組みが同じ方向性だと確認したうえで受け入れたので、一緒に働きやすかったですね。

――最後にお互いへのメッセージをお願いします!

君塚:菊池さんやフードピクトのみんなと出会いは、私の人生において大きな財産になっています。理由を挙げたらキリがないですが……ゼロからの事業開発の経験により、食のもつパワーを再認識できたこと。そしてちょっぴり以前よりも自分に自信を持てたことが、そう思う理由です。

菊池さんやフードピクトのみんななら、ありそうでなかった食の未来を創造できると強く思っています。きっと日本の食を牽引していってくれる存在になってくれるのでは……とイメージしただけでワクワクしています。またおいしいごはんをつくってくださいね。わたしもまたみんなにスパイスカレーを振舞いますね!これからも「食」を通じて、ゆるくつながっていてください。 

菊池:君塚さんが留職に参加したタイミングは、コロナ禍でそれまでの成長戦略からの変更を余儀なくされたときであり、また現在につながる新しい成長戦略が始まるときでもありました。そう思うと、フードピクト社の事業と組織が新たな一歩を踏み出すための礎をつくったのは、他ならぬ君塚さんかもしれません。

もともとされていた「モノをつくり届ける」仕事と、留職で挑戦した「コトをつくり届ける」仕事の、なんと両方ができてしまった君塚さんは確実にパワーアップしているはず。これからもそれぞれのアプローチから、食を通じて人を幸せにしていきましょう。  

インタビュー後記

インタビューでは、留職中に「相手への遠慮」から「メンバーのために自分がどう動けるか」と変化していく君塚さんの姿を思い出しつつ、彼女のメンバーに対する思いやりの強さを改めて感じました。同時に君塚さんの受け入れをきっかけに、食のさらなる可能性を追求していくフードピクトの姿を見て、これからの展開にワクワクが止まりません。

様々なメンバーが集うコレクティブなフードピクトと、留職後もメンバーを思いながら主体的に行動を続ける君塚さん。それぞれが「食」の力を通じて作り出す未来は、どのようなものだろうか……伴走者として、そして1ファンとして、期待が高まります。(プロジェクトマネージャー・渕上)

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