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日本からカンボジアの社会課題解決に貢献―そこで見つけたパーパスとは

損保ジャパンの北田さんは、2022年6月から翌年3月まで留職 (国内派遣)に参加し、NPO法人SALASUSUで活動しました。

9ヶ月の留職を通じて、「これまで模索していた、”人生におけるパーパス” が見つかった」と語り、リモートでもカンボジアの事業に大きく貢献した北田さん。その様子をお伝えします。

リモートでカンボジアの営業チームを支援

北田さんは2011年に損保ジャパンへ入社し、主に営業を担当してきました。留職に参加したのは「海外での事業展開も経験しつつ、経営を体系的に学びたい」という理由からでした。

派遣先は日本にも拠点を置きながら、カンボジア農村部でライフスキルトレーニングを通じた貧困問題に取り組むNPO法人SALASUSUです。

カンボジアは経済発展が目覚ましい一方で、10代から働かなければいけない貧困層の人々の学力は低い状況が続き、貧富の差による教育格差が課題となっています。そのような状況のなか、SALASUSUは農村部の女性たちに服飾雑貨の製造・販売を通じたライフスキルトレーニングを行い、彼女らに学びを得る機会を提供してきました。 

SALASUSU事業の1つ・ライフスキルトレーニングの様子

北田さんは日本からSALSUSUに9ヶ月間留職し、主に日本からリモートでカンボジアの営業チームのスキルアップ支援やクラウドファンディング、寄付営業サポートなどを担当することになりました。

留職への意識が変わった一言

活動開始してすぐ、北田さんの留職に対する意識が変わった瞬間がありました。それはSALASUSU代表・青木さんから団体の目指す姿を聞いた時のことだと、北田さんは振り返ります。

カンボジアの教育格差の話と、”すべての人が自己決定を通じて自分の人生を楽しめる社会をつくりたい”という青木さんの言葉を聞いた時、ふと過去の自分を振り返ったんです。そして今まで当たり前だと思って選択してきた人生が、実は当たり前ではなかった、ということに気づかされました。

SALASUSUの事業を加速させ、一緒にすべての人が自己決定できる世界を目指したい。そんな気持ちが生まれて、これからの9ヶ月を全力でやりきろうというとギアが入りました

SALASUSU代表・青木さん(写真左上)やメンバーとのオンライン会議の様子(本人・写真中央)

北田さんが担当したのは、カンボジアで活動する営業チームへの伴走です。自身の営業経験を活かし、SALASUSUの営業チームのスキルアップをメインに取り組むことになりました。当時の心境や活動について、北田さんはこう振り返ります。

自分は管理職のようなポジションで営業チームに入り、チーム体制の強化やメンバーのスキルアップを図ったのですが、最初は英語での業務やリモートによる難しさがありました。

でも言語の壁や情報のギャップはコミュニケーション次第で埋められると思い、リモートでも一人ひとりと会話を重ねていったんです。

すると次第に相手を”管理”するのではなく、一人ひとりのありたい姿を尊重したいという意識に。彼女たちが自分で考えて行動し、成長につながる方法を考えていきました。

リモートでカンボジアとつながり活動

人の成長が自分の喜びにつながる

北田さんが担当した業務の1つが営業チームメンバーのスキルアップです。具体的には団体紹介や商品説明のロールプレイングや提案資料のブラッシュアップのサポートを通じて、彼女たちの営業活動の成功を目指していきました。

1ヶ月ほどロールプレイングを重ねたある日、北田さんのサポートを受けた営業チームのメンバー3名の営業先でのプレゼンがうまくいき、商談も成功しました。この経験を通じて、北田さんにも気づきが生まれたといいます。

商談が終わり、興奮に満ちた顔で報告してくれた彼女たちをみて、“今この瞬間、みんな成長している”と感じました。この感覚は自分にとっても初めてで、なんだかすごく胸が熱くなりました。

この商談を通じて、メンバーは自分で考えて営業をする面白さを知った様子でした。そこで次の営業用にまずは彼女たちだけで企画・提案を考えてもらうと、予想していなかったほど高いクオリティーの成果物が上がってきたんです。

こうして彼女たちがどんどん成長していく姿を見ていると、人を動かす原動力は楽しさやワクワク感なのだと気づきました。

カンボジア現地で体感した社会の構造

留職4ヶ月目、北田さんはクラウドファンディング企画もメインで担当することに。カンボジアの状況を自身の声でクラファン支援者に発信することと、現地メンバーとの議論のために、北田さんは現地へ渡航することになりました。そこで実際に顔を合わせて会話をしたり、一緒にご飯を食べたりするなかで、心に残る経験をしたといいます。

ようやく営業チームのメンバーと会えて嬉しかったですし、現地でコミュニケーションしながら一緒に働き、彼女たちの成長を感じました。

一方、SALASUSUのメンバーと本音で話していくなか、彼女たちの社会的に置かれている状況が徐々に見えてきたんです。メンバーの多くが家族の面倒をみながら働いていたり、家庭の事情で小学校の途中までしか教育を受けられなかったり。

外的な社会要因が、一人ひとりのキャリアの選択肢を狭めてしまうのだと実感しました。そんな彼女たちを支援するSALASUSUにより共感すると同時に、私自身はこの状況を変えるために何ができるのか?と、考え始めたんです。

現地ではメンバーと食事も共にし、語り合った

誰もが自己決定を通じてキャリア構築を楽しめる社会を


日本に帰国後、北田さんは営業チームのサポートに加えてクラウドファンディングなども担当。様々なSALASUSUメンバーと働くなか、自身に変化が生まれていったといいます。

実は留職前、人生を通して実現したいことを模索していました。でもSALASUSUで働くうちに、自分は”誰もが自己決定を通じて、キャリア構築を楽しめる社会”をつくりたいのだと気づいたんです。

自分で決めた目標に向かって進んでいく。学校に行く、働く、家族と過ごす……そういった選択ができるから、みんなが日々の生活が充実していると思える。そんな社会にしたいと考えるようになりました。

SALASUSUで働くメンバーもよりキャリア構築を楽しめる仕組みをつくりたいと考えた北田さんは、留職最後の取り組みとして営業メンバーのキャリアアップに向けた目標設定プロセス(個人のコアコンピテンシー)を作ることを決意しました。

具体的にはメンバー自身が将来なりたい姿を考え、その実現に向けて必要なスキルをSALASUSUでの活動を通して磨いていく、というものです。

このアイデアを営業チームのマネージャーに共有し、賛同してもらうと、すぐに実施へと踏み切りました。営業メンバー全員には個別で面談を行い、取り組みの趣旨と狙いを説明していったと言います。

導入にあたっては、一人ひとりが納得するまで説明することを心がけました。というのも、これは彼女たちの将来的なキャリアアップと成長を願っての取り組みだったので、本人たちの腹落ちが大事だと思ったんです。

こうして丁寧に伝えた結果、みんなが”自分の鍛えたいスキルとその実現に向けた行動プラン”をしっかり考え、チーム全体に共有していきました。

このキャリアアップに向けた取り組みは営業チームのマネージャーと二人三脚で行ったのですが、その過程で彼女の表情がみるみる明るくなっていったことも印象的でした。

『メンバーのキャリアアップに向けた施策は自分もやりかった。営業チームだけでなくSALASUSU全体へ広げたい』と言ってくれたことは嬉しかったですね。

現地メンバーと北田さん(写真・中央)

留職での貢献を通じて得た財産

SALASUSUのメンバーに寄り添いながら、全力で駆け抜けた9ヶ月。そのなかで北田さんは、自身のパーパスを見つけられたといいます。

留職は毎日が刺激的で、本当に楽しかったです。あっという間の9ヶ月でしたが、そのなかで自分が仕事を通じて実現したいパーパスと出会えたことは、一生ものの財産となりました。

これからは、私のパーパスである”誰もが自己決定を通じて、キャリア構築を楽しめる社会”を実現するために、自社でできることを実施していきたいです。

まずはチームメンバーが自己決定をしてキャリア構築を楽しめる後押しをし、それが組織全体、ひいては社会にも広がっていけばいいなと思っています。

SALASUSU代表・青木さんからのコメント 

北田さんの活動について、留職先・SALASUSU代表の青木健太さんはこう振り返ります。

SALASUSU 青木健太さん

愛嬌とガッツはあるけど英語にちょっと不安があり、なんといっても会社の規模もフェーズもまるっきり違うなかで、リモートで営業チームと働いてもらうのは大丈夫なのだろうか……というのが北田さんを迎えた時の率直な印象でした。
 
しかしすぐにその印象は良い意味で裏切られました。それは彼が営業チームの定例の打ち合わせに参加し、直後にその打ち合わせを週2回に増やした、と聞いたとき。なんと週に1度、営業スタッフへの研修を行うというのです。

苦手だった英語も毎日数時間の勉強を続けて乗り越える努力に加えて、とにかく一人ひとりのスタッフに向き合い、どんなことに困っているのか、何を学びたいのか、それをどうサポートしていくのか、徹底的に考え行動に落とし込んでいきました。
 
カンボジア人スタッフ達は、北田さんからスキル以上に「仕事と人に対する姿勢」自体を学べたと思います。そういう意味で私たちも越境をしたような、大きな意味のある留職受け入れでしたし、彼もこの経験から得たものを活かして、より良い人生の旅を送ってくれることを祈っています。

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