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農業廃棄物を住宅建材に。留職で磨いた『倍返し』力、本業で生かす

CROSS FIELDS

パナソニックの陳さんは2018年に留職し、タイのKokoboard(ココボード)で農業廃棄物を使った環境にやさしい建材の開発に関わりました。その経験を生かして、現在はパームヤシの廃材を再利用するプロジェクトを担当しています。留職で得た学びやこれからのビジョンについて話を聞きました。(聞き手:広報・佐藤)

陳イウ氏:2011年パナソニック ハウジングソリューションズ(当時・パナソニック電工)入社。2018年にタイのKokoboardに留職。農業廃棄物を使った建材ボードを
開発・販売する同団体にて、植物由来の材料を使った建材の開発を担当。
現在はパナソニック ハウジングソリューションズ(株)にて「PALM LOOP」事業に従事

植物由来は専門外、調達から模索して試作品を完成

――ココボードへの留職では、どんな経験をしましたか?

留職中は稲わらやココナッツの殻など、植物由来の素材を使った建材開発に関わりました。もともとパナソニックで研究職として材料開発をやっていましたが、石油由来のものしか扱ったことがなく、植物由来は専門外。さらに大企業のパナソニックとは違い、ココボードには創業者のNutsi(ナッシー)と材料技術者として来た私の二人しかいません。論文調査や原材料を手に入れるといった初期の段階から、全て自分でやらなくてはなりませんでした。

留職中、ラボで実験を重ねる陳さん

――想像するだけで大変そうですね……

やるしかないって感じでした(笑)。材料調達とはいえ、もちろんルートがないので、最初は市場で売っているキャッサバを買ってきて実験するようなところから始めました。ナッシーと私だけでは技術もノウハウも足りないので、現地の人を巻き込むために大学に行って実験を手伝ってくれないかお願いしたり、繊維系のラボの人に調達のツテがないか聞いてみたり。そうやって地道にひとつずつ試行錯誤していきました。

そして帰国する一週間前、それまで小さいモデルサイズで作っていた建材を実用サイズで製造することに挑戦しました。50センチ四方の板をちゃんと作れた時の「やったなあ、よかったなあ」という達成感と、ナッシーの感動した顔は今でも忘れられません。二人で毎日顔を合わせるなかで意見が違って対立する時やつらい時もあったけど、頑張ってきてよかったなと思った瞬間でした。

代表・ナッシーと議論を重ねる陳さん(写真・右)

「停滞せずとにかく行動」留職で得たマインドが糧に

――留職の経験が、今の業務にもつながっているんですね。

現在はパームヤシの廃材を再生ボードとして再利用する社内プロジェクト「PALM LOOP」に携わっています。

パームヤシからとれる油はパンやチョコレート、シャンプーなど、様々な食品や日用品に使われていて私たちの生活に欠かせない存在になっています。その反面、マレーシアやインドネシアでは収穫期を終えた大量のパームヤシが廃棄されていて、いずれ深刻な環境課題になるといわれています。

プロジェクトではこうしたパームヤシの廃材を建材に活用し、SDGsの観点で価値を訴求しながらマーケットに広めようとしています。すでに大手家具メーカーで取り扱いが始まっていて、導入事例も出始めました。私は海外市場開拓を担当しており、中国やベトナムなどの東南アジア地域で現地の家具業界とのコネクションづくりに取り組んでいます。

「PALM LOOP」ショールームの様子

――仕事をしていて、留職の経験が活きていると感じる時はありますか?

ありますね。特に「柔軟に手法を変えて人を巻き込んで解決する」「とにかくアイデアを出して行動する」という自分のマインドは、留職で身についたなあと感じます。

しっかり事前準備をして現地に行ったけど想像と全く違ってショックを受けたり、落ち込んだりするのは、留職者の間ではよくある経験。私もそうでした。でもそこでいかに停滞せず行動していくかが大事です。

今の業務でも、中国やベトナムの家具メーカーにどうアプローチしていくか地道に調べて試行錯誤するなかで、このマインドが活きていると思います。

――留職で行動し続ける力が磨かれたんですね。

もともと後悔したくないタイプで、(ドラマで有名なセリフの)「倍返し」じゃないですけど、チャンスがあったら絶対につかまってやり続けたいんです(笑)。留職を経て、この負けず嫌いなマインドに、課題解決に向けてメンバーを巻き込む力と手段を変えていく柔軟性が加わったように思います。

留職中は納得がいくまで代表のナッシーと議論を重ねた(本人・写真右)

一方で、後悔なくやりきったというわけではなく、心残りもありました。

3か月間で試作品は作れたものの、量産化などその後の話はペンディングしたままになりました。でも経営者のナッシーにとっては、量産化やその後ビジネスとしてやっていけるかという経営の不安の方が大きいはず。私は材料技術者ですが、「技術の視点だけでは何も助けにならなかった」という悔しい思いが残りました。

帰国後は社内で自主的にプレゼンをして、経営やマーケティングに詳しい人にココボードのような団体を支援してくれないか募ったり、アイデアをもらってナッシーに連絡したりしています。

私自身も、技術面だけでなく組織体制全体について考えられるようになりたいと、現在プライベートの時間で勉強しています。

素材の力で各地の課題を解決したい

――今後のビジョンについても教えてください。

これからも素材の力で各地域が抱える課題を解決していくことに関わっていきたいですね。

そう思ったのは留職で現地を見て、リアルに社会課題を実感したことが大きなきっかけでした。留職後は訪れた場所の課題にアンテナが立つようになって、例えばインドに行ったときは放置された山積みのココナッツ殻に目が向き、自分ができることを考えるようになりました。

今後もアンテナを張って知識を蓄えながら、社会課題と向き合っていきたいと思っています。

オイルパームの伐採現場の様子。
放置された廃材は土壌病原菌の蔓延など、土壌環境へ深刻な影響を与えるとされる。

「PALM LOOP」プロジェクトではマレーシアとインドネシアを舞台にしていますが、この二国の社会課題解決だけでなく、もっと視野を広げていきたいですね。

例えば中国やベトナムではまだ価格やスペック面の訴求が販売の中心で、SDGsへの関心は低い。こうしたなかでどうやって市場に参入していくか、
どんな市場なら環境訴求が受け入れられるのかなど、模索していきたいです。

編集後記

社会課題の解決につながる優れた技術を持つ大企業は日本に多くあるはずなのに、マッチングがなかなかうまくいかない。インタビューの時に陳さんが「モヤモヤしている」と打ち明けてくれた指摘でした。

そのためには国ごとの社会課題について定期的に知れたり、ビジネスの視点でどんな提案ができるかを考えたりする機会がもっと増えてほしいとのこと。クロスフィールズとしても留職プログラムの枠を超えて、社会課題の「原体験」を持つ人を増やし、サポートする取り組みに力を入れていきたいと感じました。(広報・佐藤)

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