インクルージョンマネジメントを推進するには?
経営者の間でインクルージョンへの関心が高まっています。組織開発の一環として、インクルージョンマネジメントを取り入れる企業も出てきました。今回はインクルージョンマネジメントの定義やダイバーシティとの関連性、組織が導入するメリットや進め方について解説していきます。
インクルージョンマネジメントとは
インクルージョンは「包含・包括」などの意味をもち、もともと教育・福祉分野で広まった考え方です。その後企業の組織強化を行う場合にもその有効性が認められ、インクルージョンマネジメントという言葉が生まれました。ここでは、インクルージョンマネジメントの概要を解説します。
インクルージョンを経営方針に導入
インクルージョンマネジメントとは企業経営にインクルージョンの考え方をとり入れることです。インクルージョンは、さまざまなバックグラウンドを持つ社員同士が互いに個性を認め合い、一体となって働いている状態を意味します。
近年では、多様な人材を組織に受け入れるダイバーシティの取り組みを行う企業が増えてきました。それぞれの価値観や考え方を企業活動に活用し、成果向上を図るのがインクルージョンマネジメントの狙いです。
インクルージョン導入で期待できる効果
個人の適性に合った仕事を任せれば、社員は自身の強みを発揮できます。結果的に成果を出しやすくなり、社員の士気やモチベーションが向上します。また、個性を認めることで会社に尊重されているという意識が芽生え、社員のエンゲージメントも上昇するでしょう。
多様な価値観にもとづいた考えや意見がシナジー効果を生み出します。新しい事業アイデアが生まれたり、難しい課題を解決したりすることも可能になります。
インクルージョンマネジメントを進めることで、社員全員が働きやすい職場環境がおのずと構築されます。離職率の低下や人材確保につながり、会社の業績向上に寄与するでしょう。
インクルージョンをスムーズに導入するポイント
インクルージョンマネジメントでは、企業理念や事業目標の共有を徹底することが重要です。多様な意見や異なる能力がバラバラな方向へ向かうと衝突が起こりやすくなるでしょう。同じゴールを見つめた状態でなければ多様性の強みを活かせません。
企業がダイバーシティやインクルージョンを推進していく際には、社員一人ひとりがそれらを理解し、対応できているか確認することも必要です。個々の状況を聞き出し、課題や悩みを抱えているなら解決を図りましょう。
急激な変化は社員も混乱するため、段階的にインクルージョンマネジメントを進めていくのが大切です。
ダイバーシティ&インクルージョンを取り入れよう
インクルージョンマネジメントの目的は、多様な人材を最大限に活用して企業の組織力を高めることです。その目的を達成するために、ダイバーシティ&インクルージョンを理解して企業にとり入れていきましょう。
ダイバーシティの課題
ダイバーシティは「多様性」を意味し、ビジネスのシーンでも使用されています。日本におけるダイバーシティの広まりの背景として、少子高齢化が進み、労働人口不足が懸念されていることがあげられます。外国人労働者の増加もあいまって、さまざまな人材を受け入れるためにダイバーシティの考え方が広まっているのです。
ダイバーシティを掲げ、異なるバックグラウンドの人材を採用する企業が増えてきましたが、単に採用する人材の幅を広げるだけでは組織強化につながりません。ダイバーシティ実現に向けて乗り越えなければならない課題があるためです。
たとえば、生き方や価値観の相違によって社員同士の摩擦や対立も起こりえます。外国人労働者を採用する場合は言葉の問題もあるでしょう。意思疎通がうまくできなければ、かえって組織のパフォーマンスを下げてしまいます。
ダイバーシティを機能させるインクルージョン
インクルージョンマネジメントの重要なポイントは、ダイバーシティの考え方にもとづいて多様な人材を採用するにとどまらず、個々の能力や適性に合わせた人材の活用を図ることです。
ダイバーシティ&インクルージョンでは、外国人やLGBT、シニア、障がい者、介護従事者、家事や育児を抱えている人など、さまざまな個人を尊重し、それぞれにあった仕事を任せることで組織力の強化を目指します。
個性が相互に機能している状態を作り出すためには、企業が積極的な働きかけや仕組みづくりを行っていくことが必要です。
インクルージョンマネジメントの進め方
インクルージョンマネジメントを進めるには、経営者や管理職を含め、社員全員の理解が必要です。また、管理職には多様な人材を活かすためのマネジメントスキルも求められます。ここではインクルージョンマネジメントの進め方を説明します。
インクルージョンの理解と意識改革
インクルージョンマネジメントを進めるにあたっては、経営層や管理職、人事担当者がダイバーシティ&インクルージョンを理解しておかなければなりません。そのうえで、企業理念や事業目標をインクルージョンマネジメントに落とし込んでいきます。
「高齢者はパソコン業務が苦手だ」「外国人は時間にルーズ」「女性はリーダーになりたがらない」などの先入観や偏見も、インクルージョンマネジメントの妨げとなります。経営層や管理職、人事担当者が自身の持つ「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」を認知し、取り除くことが大切です。
多様な人材を活用するマネジメントスキルの習得
管理職は多様性のあるメンバーで構成されたチームのマネジメントを行えるようになる必要があります。一人ひとりの特性や得意分野、性格などを見極めて仕事を与えられるかどうかがインクルージョンマネジメントの鍵を握ります。
そのため、管理職には研修などを通して、多様なメンバーに対するコミュニケーションや指導の方法、適材適所の業務采配を身につけることが求められます。
全社員が多様性の当事者意識を持つ
インクルージョンマネジメントの導入直後は、社員も戸惑うことが予想されます。自分とは異なる相手の立場や境遇をすぐには理解できないためです。仕組みが機能するまで一定の時間はかかり、何らかの研修も必要になるでしょう。ケーススタディなどで多様性とは何かを知る機会を設けるのも有効です。
インクルージョンマネジメントが成功している組織は、社員全員がお互いを認め合い、「多様性のなかで協力して仕事を進める」という当事者意識を持っている状態だといえるでしょう。
インクルージョンマネジメントは組織強化につながる
インクルージョンマネジメントでは、ダイバーシティ&インクルージョンの実現に向けた取り組みが重要です。さまざまな人材の個性を認めて活用することができれば、組織力の強化と成果向上はもちろん、社員のエンゲージメントも高まります。新しい人材を呼び、採用につながる好循環も生まれるでしょう。
インクルージョンマネジメントを効果的に進めていくには、ダイバーシティやインクルージョンの理解と意識改革が不可欠です。研修などを通じて、多様性を活かす管理職のマネジメントスキルの習得や社員同士の相互理解、当事者意識の醸成も図っていきましょう。
NPO法人クロスフィールズは、社会課題体感フィールドスタディやVRワークショップなど「多様な人や価値観と出会う」事業を通じて、企業のダイバーシティ&インクルージョン推進を支援しています。具体的な取り組みは公式noteやホームページでご紹介しています。ぜひ参考にしてください。