クロスフィールズ職員がカタリバに「留職」してみたら
クロスフィールズは2020年6月から12月まで、スタッフ1名を認定NPO法人カタリバに派遣しました。「留職」を手がけるクロスフィールズが自ら留職者を派遣するのは初の試みです。出向の形で「留職」し、大きく成長して帰ってきた藤原は、カタリバでどんな経験をしたのでしょうか。
藤原未怜:前職の民間IT会社では医療分野を担当。「社会課題の解決に向けて行動できる人を増やしたい」という動機から、2019年12月にプロジェクトマネージャーとしてクロスフィールズに入団。
教育の現場にどっぷり浸かる
今回の出向は自分から希望しました。教育に携わる認定NPO法人カタリバへの派遣が決まり、元々関心のあった教育の現場にどっぷり入り込むぞ!と意気込んでのスタートでした。配属先のオンライン事業部では、3月の一斉休校を受けて開始した緊急支援活動「カタリバオンライン」の事業化に取り組みました。そのほか学術機関と連携しプログラムの効果検証を行うなど、業務内容は多岐に渡りました。
出向先でまさかの昇進
子どもと直接触れ合う「現場」とその裏側の運営、どちらにも関われたのは大きかったですね。現場ではオンラインプログラムに参加した子どもたちが変化していく様子を目の当たりにし、カタリバの価値を実感しました。現場で気づいた点は運営に活かして改善をすすめ、8月には目標だったオンラインプログラムの事業化が実現します。この成果が認められたのか、なんとカタリバで昇進することになったんです。想定外だったのでとても驚きましたが、純粋に嬉しかったですね。でもその後の事業拡大はチャレンジの連続でした。
初めての挑戦と挫折
いざ事業拡大となったものの、チーム全員が何から始めれば良いかわからなかったんです。私も未経験の人事やプログラム企画など担当し、試行錯誤しながら進めました。なかでも大変だったのがPR業務です。会員を増やすためPR活動や保護者説明会など、とにかくできることを全部やりました。でも簡単には会員は増えなくて、かなり落ち込みましたね……。それでも限られた時間で成果を出そう、落ち込んでる場合じゃないって自分を奮い起こして、事業を軌道に乗せるため行動し続けました。
残念ながら私の派遣期間中に会員数の大幅増は達成できませんでしたが、最終報告会でカタリバの方々にこう言ってもらえました。
「チーム全員が知見のないなか、どう行動すればいいか示してくれた。だから藤原さんがいなくなっても、メンバーが動けるようになった」「藤原さんの取り組みは、カタリバオンラインの土台となった」
チームに何か残せたこと、そして自分の行動を認めてもらえたことは自信につながりましたね。
成長を後押しした環境
異なる場所でも前進し続けられたのは、いくつか理由があります。そのひとつがカタリバの環境。というのも、カタリバには人に任せて応援しあう組織風土があったんです。出向してすぐに「気づいたことがあったら、なんでも口と手を出して」と言ってもらって、とても動きやすかった。実際に私が企画したオンラインプログラムも実現しました。そうすると、そこで生まれた成果がモチベーションになって次の挑戦ができるし、自然と自信もついていったんです。
クロスフィールズのサポートも大きかったですね。派遣中はクロスフィールズのスタッフが「プロジェクトマネージャー」として隔週で1on1をしてくれたり、定期的なオンラインランチを設定してくれたりしました。その時に感じていることや悩みを伝え、深掘りしてもらうなかで自分の本音や壁が見えてくる。すると、次はこんな風に行動してみようと意識が変わる。初めての業務に囲まれてがむしゃらだったので、特にこういった時間が大切でした。
今後やっていきたいこと
カタリバでの経験を通じて、NPOはビジネススキルがある人を必要としているし、世の中には課題解決に取り組みたいけど最初の一歩が踏み出せない人が多いということを改めて実感しました。クロスフィールズに戻ったいま、社会課題に関心を持つ人を増やすだけでなく、そういった人々が集まって課題解決をする場をつくることにもチャレンジしていきたいです。
挑戦するときに大切にしたい価値観も、今回の出向から学びました。オンラインプログラムの会員増加がうまくいかず悩んでいたとき、同僚から「いま社会にそのニーズがあるかではなく、自分が価値があると信じているものを届けたい」という言葉をかけてもらったんです。ハッとしましたね。価値を信じて行動すれば、いずれ結果はついてくるんだと。この姿勢を大切に、クロスフィールズでも価値を出していきたいです。
クロスフィールズを変える
他のNPOで働いてみて、実はクロスフィールズの組織風土って少し大企業っぽいのかも?という新たな発見もあったんです笑。大企業向けの事業を展開し、ビジネス経験が豊富なメンバーが多いので、良くも悪くもシッカリしすぎなのかも。だから出向前は無意識のうちに失敗しないやり方で仕事をしていた気がします。一方でカタリバではのびのび働けたなと。その背景には「創りたい未来に向けて、とにかく行動してみよう!」という組織風土があったからなのかもしれません。そんな環境で働いたことで、誰かの反応を気にして行動しないのはもったいないと気づきました。クロスフィールズもプロフェッショナリズムは大切にしつつ、カタリバの風土もうまく取り入れることができればもっと成長できると感じています。そのためにまずは私自身が物怖じせず、どんどん提案していきたいです。
今回の出向では、藤原自身の成長に加えて組織としての学びがたくさんありました。クロスフィールズも留職の仕組みを広げるだけでなく、外部組織へのスタッフ送り出しや外部からの人材受け入れを通じて、人材の流動化に取り組んでいきたいです。
(現在、クロスフィールズではJICAインターンやローンディル社のレンタル移籍者など、計3名の外部人材を受け入れています。詳しくはこちらのプレスリリースをご覧ください)