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つなぐを超える価値創出を。Co-Create事業推進マネージャーが語るクロスフィールズの新たな挑戦

クロスフィールズは2022年より「課題の現場にリソースを届け、ともに解決策をつくる」をミッションの1つに掲げ、その実現に向けてCo-Create領域が立ち上がり、そこでの挑戦がスタートしています。2024年には孤独・孤立対策事業が開始し、国内外での取り組みを行っています。
 
今回はCo-Create領域・事業推進マネージャーの西川紗祐未より、Co-Create領域が生まれた背景や現在の活動について深堀りました!

西川紗祐未:Co-Create事業推進マネージャー
政府系援助機関を経て2018年クロスフィールズに加入。
プロジェクトマネージャーとして留職やフィールドスタディに携わる。
2022年からCo-Create領域を担当

Co-Create領域と孤独・孤立対策事業の誕生の背景

――2022年より前は、留職やCo-Create領域の前身とも言えるソーシャルセクター支援(以下、SSE)を担当していましたよね。そのなかで感じていたやりがいや課題感を教えてください。
 
西川:留職とSSEはどちらもNGOやNPOと企業をつなぎ伴走することを大切にしてきました。ただつなぐのではなく、関わる人々の「想いをつなげる」のが、クロスフィールズの価値だと思っています。

一方で、社会課題と間接的にしか関われないことへのもどかしさも感じていました。たとえば留職だと私たちの役割は留職者と派遣先団体の協働への「伴走」で、どうしても留職者や派遣先団体と同じ目線に立って課題解決や社会づくりに取り組むことは難しい。
 
今までの「つなぐ」の役割を超えて、自分たちも現場にもう一段踏み込み、現場で活動する方々と同じ目線に立ち、一緒に社会課題解決に取り組みたい……。こんな気持ちが大きくなっていきました。
 
ちょうどそのタイミングでクロスフィールズのビジョン・ミッション刷新が2022年に行われ、刷新したミッションの1つに「課題の現場にリソースを届け、ともに解決策をつくる」が生まれ、これが元になってCo-Create領域が誕生しました。

2022年のビジョン刷新で誕生したCo-Create

とはいえ、Co-Create領域が生まれて間もなくは「どこで、誰と、何をやるか?」全く決まっていませんでした。
 
クロスフィールズはこれまで「セクターを超えて人や組織をつなぐ力」で特定の地域や社会課題にとらわれず事業を行ってきましたが、セクターを超えて人や組織が手を取り合い共に課題解決に取り組む事業を生み出すというCo-Create領域のミッションを実現するには特定の地域や社会課題の軸を定める必要があると感じ、何度も議論を重ねCo-Create領域として取り組む社会課題を「孤独・孤立の課題」に決めました。

その過程では、①課題の喫緊性 ②社会的ニーズの高まり ③クロスフィールズの強みである「つなぐ力」を活かせるか ④メンバーが想いを持って行動できるか、など様々な観点から検討しましたが、最終的な決め手は自分たちが自分事として想いを持って取り組みたいと思ったからでした。
 
孤独・孤立対策の領域は幅広いですが、私たちは孤独・孤立の「予防」の領域に特化し、人と人・人と地域のつながりづくりを行うこととしました。孤独・孤立課題に対する知見もネットワークもないところからの立ち上げだったため、内閣官房(当時)が取り組む孤独・孤立対策官民連携プラットフォームの事務局業務に一部携わらせていただいたり、民間助成を受けて日本・アメリカ・韓国の3カ国で孤独・孤立対策に取り組む方々との間で学び合いを行ったり。

私たち自身が日本や海外における孤独・孤立の課題の現状や取組を学び、課題解決に取り組む方々との関係構築をしながら方向性を見出していきました。 

日本のNPOリーダーらとアメリカに訪問し、現地団体との学び合いも実施

北海道・更別村に飛び込み課題の解像度を上げる

―――2023年9月から10月までは(株)CNC(以下、CNC)に「留職」していましたよね。そのきっかけを教えてください。
 
2023年は少しずつ事業のイメージができ始めた頃でした。でも実際に現場での経験がないので孤独・孤立の課題の先にいる方々の「顔」や状況・状態がわからなかったのです。そこで「一度現場で活動させてほしい」と内部で検討してもらい、CNCで2ヶ月にわたり留職させてもらいました。これがCo-Createの事業を本格化していく上での一つの転換点になりました。
 
CNCは「"生きる"を、進化させる」をビジョン掲げ、コミュニティナースの社会実装などに取り組んでいます。コミュニティナースとはいわゆる職業としての看護師ではなく、暮らしのなかで「毎日の嬉しい・楽しい」を一緒につくる方々のことです。

CNC・北海道更別村で活動するみなさんと

CNCでの留職中、私も北海道・更別村でコミュニティナースの一員として、村の高齢の方々のご自宅を訪問したり、介護予防プログラムに参加したり、地域住民の方々と多くの接点を持たせていただきました。
 
そのなかで様々な住民さんとの出会いや、私自身の「居場所」の発見などを通じて、2か月にわたり「孤独・孤立」のテーマに向き合いました。この経験を通じて課題の解像度が高まり、Co-Createで取り組む事業の先に目指したい社会像やそのためのアプローチを整理し、事業構想を描くことができました。

能登半島地震を契機に石川県での活動を開始


――2024年1月の能登半島地震をきっかけに、石川県での活動が開始しました。その背景と活動内容を教えてください。
 
CNC留職を経てCo-Createとして特定の地域に入り込み事業を立ち上げる議論を2023年末に開始しました。そんななか、2024年1月に能登半島地震が発災。その直後に何もできない自分にやるせなさを感じ、何かしたいという気持ちから「クロスフィールズができることはないか」と声をあげ、団体で何ができるか考えていきました。

この時は孤独・孤立対策事業とつながるとは考えていませんでしたが、震災復興の専門家にヒアリングを重ねるなかで「震災から半年程が経つと、被災者の孤独・孤立が深刻な課題になる」と知り、特にリスクが懸念される広域避難者向けの孤独・孤立対策に取り組もうと決めました。
 
以前から協働している認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえからのご縁もあり、24年3月から金沢で広域避難者向けの孤独・孤立対策事業に取り組むことになりました。

実際に現場で活動を重ねた

この事業では、慣れ親しんだ土地を離れて新たな環境で生活をしている広域避難者の方々に、金沢市内のこども食堂の開催情報を一覧にして発信していくアウトリーチ活動を行いました。地域住民の交流拠点としての機能を持つこども食堂の運営者のなかには「広域避難者向けに場を開放したい」と考えている方も多くいたのですが、その情報が当事者に届いていない状況だったため、石川県庁・金沢市社会福祉協議会・地域の団体等と連携して、情報拡散を行いました。
 
実際に広域避難者の方々との対話を重ねるなかで、世代を問わず悩みや困り事を抱えているものの、特に高齢の広域避難者のひきこもり化が深刻だとわかってきました。能登の高齢者にとって金沢は「大都会」です。知り合いはおらず、地域のことがわからず、外に出る気力も起きないので家の中に籠ってしまう。
 
高齢の親や祖父母を支える方々からは「全く外に出ず誰とも接点を持たないせいで身体機能も認知機能も怖いくらい低下していて不安」「このままだとメンタルヘルスの悪化や要介護状態になってしまうのではと心配」という声がたくさん聴こえてきました。高齢の広域避難者の引きこもり化は、彼らを支える若い世代にとっても大きな心理的・物理的課題になっていると感じました。

様々な関係者と協働するプロセスを大切にしていきたい


――現在の活動についても教えてください。
 
2024年8月頃から内閣府などの補助を受ける形で金沢にて高齢の広域避難者向けのコミュニティづくり事業を行っています。能登半島地震によって社会的孤立や孤独のリスクがある方々に、同じ経験をした方や地域の方々とのつながりを感じ、安心して生活できるきっかけを届けたいと思い立ち上げました。社会的処方をモデルとし、同じ想いを持って共感してくれている地域住民の方々に市民リンクワーカーとして参画してもらい、一緒に取り組みを推進しています。(事業に関する詳細はこちら:プレスリリース笑語ひろばwebサイト

リンクワーカーのみなさんと

24年10月から市民リンクワーカーのみなさんと「居場所」の機能を持つ交流型イベントを定期開催しています。参加者の方々からは「普段は外に出る機会がほとんどないが、今日はたくさんの笑顔をいただきとても楽しかった」「震災以来、久しく笑うことをしていなかったが、今日は笑うことができた」「次は知り合いを誘って参加したい」といった言葉や、みなし仮設に一人暮らしする高齢の母親をケアする女性からは「このような機会をずっと探していた」との声が聞こえてきました。
 
すでに継続的に参加してくださる方や知り合いと参加してくれる方が出てきたり、このイベントがきっかけで地域での畑作業やボランティアなどにつながった方がいたりと、様々な事例も出てきています。

落語をテーマにしたイベント後に座談会を実施

――最後に、今後の展望を教えてください。
Co-Createはこれまでご一緒してこなかった団体とゼロから信頼関係を構築し、一緒に事業を進めていくことが多くあります。自治体、地域のNPOや市民団体、地域住民の方々など、クロスフィールズを知っている人はほとんどいません。
 
このような環境で、事業の円滑な推進だけにこだわるのではなく、共感に基づく信頼関係の構築や日々の対話、現場の声を踏まえた柔軟で共創的な意思決定と事業推進など、協働するプロセスを大切にしていきたいです。
 
まだまだ挑戦は続きます。今の取り組みを継続するなかで価値を創造し続けること。既にある地域資源や想いを持つ地域住民の方々と連携・持続し、さらには他の地域にスケールできる仕組みをつくること……。チャレンジは始まったばかりですが、一歩ずつ前進し続けていきたいです。

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クロスフィールズでは現在、プロジェクトマネージャーをはじめ新たに仲間を募集しています。詳細は以下のwebサイトをご覧ください。