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サステナビリティ推進のカギはローカル企業にあり?SXリーダーシップ実践プログラムで得られる経験に迫る!

クロスフィールズは、2023年8月から24年2月に次世代経営層向け・複数社合同で実施する越境プログラム「SXリーダーシップ実践プログラム」を実施しました。

これはビジネスパーソンが日本の地域社会に向き合う経営者(通称:ローカルリーダー)の右腕として活動に取り組むなか、そこで得た経験と経営者視点をもとに自社のビジネスプランを策定する半年間の越境プログラムです。

今回はプログラム参加者2名を迎え、学びや気づきなどを伺いました!(本レポートは2024/03/21実施のオンラインイベントを元に作成しています)

登壇者

荒木 達也さん
日本電気(株)コンサルティングサービス事業部門 プロセスマイニンググループ
NTTドコモ、PwCコンサルティングを経て現職。
新規ビジネス開発(エンタープライズソリューションを軸に、
マーケティング・戦略策定・プロモーション・プリセールスなどを通じた事業立上げ)に従事 
平野勇輝さん
(株)NTTドコモ スマートライフカンパニー ウォレットサービス部
大学卒業後より同社入社し、ドコモショップの営業支援や販売施策の立案等に従事。
その後は同社内でヘルスケア事業等を経験し、現在は電子マネー「iD」の事業を担当中。
山崎怜美
クロスフィールズ プロジェクトマネージャー
民間企業を経てクロスフィールズに加入し、社会課題体感フィールドスタディを主に担当。
SXリーダーシップ実践プログラムはメイン担当として携わっている。

いま注目が高まる「SX」と実践における課題

はじめにSX(サステナビリティトランスフォーメーション)と本プログラムについて担当プロジェクトマネージャーの山崎よりお話ししました。なお、SXについてはこちらの記事もご参照ください。

山崎:SXは2020年に経済産業省が提唱し、注目を集めてきました。SXとは「企業が利益創出をしながら、社会・地球環境が持続することを同時に目指す」もので、時間軸を長期で捉えていることも特徴だといえるでしょう。

またSX実現に向けて重要なポイントとして①企業として稼ぐ力を中長期で持続化・強化する ②未来の社会像をバックキャストし、社会のサステナビリティを経営に取り組む ③長期の時間軸で企業と投資家の対話を繰り返す の3つが重要としています。

このようにSXに取り組む機運は社会的に高まる一方で、「いざSXに取り組もうとしても、社内メンバーが自分事としてとらえず、取り組みが加速しづらい」など、現場における実践での課題が聞こえるようになってきました。 

このような現状も受けて、クロスフィールズではSXの実現に向けて特に「未来の社会像からバックキャストし、社会のサステナビリティを経営に取り組める人材を増やす」ことが重要だとし、各プログラムを通じて次世代リーダー人材の育成に取り組んでいます。

そして様々なプログラムを実施するなか、①社会に対する手触り感 ②志につながる原体験 ③実践から生まれる成功体験 によって、SX推進を加速できるリーダー人材育成につながることがわかってきました。

「SXリーダーシップ実践プログラム(以下、SXプログラム)」では、これらの要素を網羅する内容で実施。現場での活動とワークショップを組み合わせ、参加者へ実践を通じた気付きと内省による学びを生み出す半年間の実践型プログラムです。

山崎:本プログラムは6ヶ月で実施するもので、前半の4ヶ月は岐阜や愛知など東海地域のローカル企業にチームで飛び込み、地域社会に向き合う経営者(通称:ローカルリーダー)の協力隊として活動し、そこでの学びと経験を後半の自社でSXを実践するためのアイデア立案へとつなげていきます。

前半の実施舞台となる東海地域には、人口流出や過疎化など厳しいビジネス環境下でも新たな発想やイノベーションを通じて事業を創出・継続し、地域社会の産業と文化を守り続ける企業が多くあります。そこで参加者は現地企業の経営者のサポーターとして活動するなかで、限られたリソースを活用した事業創出や、社会的かつ長期的な視点でビジネスを構想する視座を獲得します。また様々な価値観を持つステークホルダーを巻き込み、事業を推進する経験をします。

プログラム後半では、前半の活動を通じた学びと経験を自社でのSX実践にむけたアイデア立案へとつなげていきます。複数回のワークショップや、コンサルティング会社において社会性と事業性を起点としたビジネス創出を経験した方によるアドバイスを受け、自社のリソースを活用しながら社会性と事業性の両方を実現するSXプランを策定していきます。なお、全プログラムの平均活動時間は週4〜5時間です。

昨年のプログラムの様子

SXプログラム参加者とのクロストーク

山崎:ここからは昨年度のSXプログラム参加者2名を迎え、6ヶ月間の活動内容やその後の自身の取り組みなどをお話ししてもらいます。まずは自己紹介とプログラムでの活動について教えてください。

荒木:NECの荒木です。現在は新規ビジネスの開発に携わっており、具体的にはお客様の業務をデータドリブン型で変革するコンサルティングサービスなどを担当しています。

前半のローカルリーダー協力隊では、1876年創業のアパレル企業に伴走しました。その企業は地域で長く受け継がれてきた技術や素材を大切にしつつ、生産背景の透明性を意識して持続的な製品づくりに取り組んでいます。これまで主に大人向けの製品を販売していましたが、今回のチーム活動では子供服の販売に挑戦。製品企画からマーケティング戦略の構築、価格の設計からECサイトのページづくりまで一気通貫で行いました。

荒木さんのチームが手掛けたECサイトのページ

平野:NTTドコモの平野です。現在は電子マネー事業の部署で営業担当を務めています。ローカルリーダー協力隊では、枡の製造会社で新たなコンセプトに基づく新規プロダクトの開発や商流の検討を行いました。

具体的には枡づくりを小学校の授業に取り入れ、枡に使用される木を植える植林体験を授業に取り入れ、子どもたちに林業への関心を高めてもらおうというプロジェクトを推進していきました。

枡づくりワークショップなどのトライアル実施もした

平野:プログラム中は上述のコンセプト策定や商業施設での試験的なイベントを実施。学校での授業トライアルへの協力や、植林場所の視察等を通じて協力いただける場所候補も見つけるなど、実現に向けた協力基盤を整えていきました。

実はSXプログラム後も自主的にチーム活動を続けており、現在は本プロジェクトへの資金として岐阜県の補助金を得ることが出来たので、具体的な活動に向けた支援を行っています。

現場での実践を自社のSXプランに落とし込む

山崎:プログラム後半ではSXプラン策定に取り組んでもらいましたが、前半の学びはどのような形でプラン策定に活きましたか?

荒木: 前半の活動は自分の仕事がどのように社会につながっているのかという、「手触り感」を体感するものでした。チームメンバーで何度も「どのような製品が持続可能につながるのか」を議論して突き詰め、その結果をもとに活動を重ねたことで、SXの根幹である「社会性と事業性どちらの持続性も実現する事業」の推進を行えました。

同時にローカルリーダーから聞いた「当社では地域の素材を使っているが、世界的にアパレル産業では児童労働が課題。自分も何ができるか、いつも考えている」という話をきっかけに、自分のなかで児童労働への関心が高くなりました。

そこでSXプランは「児童労働をなくすことを目的にNECの持つ技術を活用する」というものを考えました。この実現に向けたマイルストーンを引き、直近はプロジェクト実現に向けた体制構築のため、社内外でチームメンバーを探す活動を行っています。

平野:荒木さんと同じく、チーム活動ではメンバーと長時間にわたって「SXとは何か」「どんな事業が本当に持続可能性につながるか」「自分たちのテーマである枡に置き換えるとどんなことができるか」など議論しました。

その結果、枡づくりと植林をかけ合わせた小学校向けのプロジェクトが生まれたのですが、この一連のプロセスを経験できたことが大きな持ち帰りです。

チームで議論した際の様子

平野:SX事業プランを考える際も、「自分はどのような社会を実現したいのか?」を突き詰めて考えていきました。その結果、「より多くの人が自発的に社会活動(ソーシャルグッドアクション)に取り組む社会を実現したい」という想いに辿り着きました。

これを実現するために今は、自社で新事業等へ取り組む各種プログラムがあるので、そういったフィールドやプロボノに関心のある方の行動を起こすような事業創出を考えています。

ロジック以外の視点、多様な価値観……ローカル企業への越境で学んだこと

山崎:プログラムで特に印象的だったことや学びを教えてください。

荒木:印象深かったのは、ローカルリーダーが自身の気持ちを大切にしながら事業を行っていたことです。これまで自分はロジックを重視して働いてきたので、リーダーの「自分は子供の未来を守ることと、自社製品に関わる全ての人に幸せになってほしいという気持ちを大切にしながら経営している」という言葉がすごく印象的でした。人を巻き込んで物事を進めるには、ロジックだけではなく自分の想いを伝えることも大事なんだ、と。

このロジック以外の部分も大切にする意識と、チーム活動でSX事業を実践した経験を得られたことは、現在の業務にもつながっていると感じています。例えばシステム導入の営業現場では、「自社サービスがどのようにサステナビリティや社会課題解決につながるか?」ということも語れるようになり、他社との差別化や相手からの共感が生まれやすくなったと感じています。

チーム活動中の様子(本人・右)

平野:他流試合であることも大きかったですね。複数社合同のプログラムのため他社からの参加者と議論を重ねて協働でき、色んな価値観をもつチームメンバーからの学びも多かったですし、様々な意見を取り入れながら前に進む経験ができました。プログラム後も参加者同士でつながっていて、仕事の相談などもできる関係になったのは自分にとって大きいですね。

SXの観点では、今回のプログラムを通じて社会性と事業性を同時に実現する難しさを実感しつつ、それに取り組む素地ができたと感じています。自社事業に落とし込むのはかなり難易度が高いと思いますが、今回の経験も活かして挑戦し続けたいと思っています。

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国内外の社会課題の現場に越境し、リーダーシップを醸成する「社会課題体感フィールドスタディ」については以下のwebサイトをご覧ください。