見出し画像

ESG経営のメリットとは? 投資から見る価値と人事ができること

昨今「ESG」というワードを頻繁に耳にするようになってきました。多くの企業や経営者がESGを重視した経営・組織改革へと舵を切りはじめています。そもそもESGとはなにか、注目されるようになった背景とともに解説します。またESG経営をすることによる企業や従業員へのメリット、人事部門がESG経営に貢献できる取り組みにはどのようなものがあるのかも紹介しましょう。

ESG経営とは

画像1

ESGの定義と注目が集まる背景について、SDGsやCSRとの関わりにも触れながら説明します。

■ESGとは

「ESG」とは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉です。

財務状況だけでは将来の企業価値の見通しが立ちにくい世の中になってきたからこそ、企業に投資するうえでESGの観点が重要度を増しています。環境、社会、ガバナンスの観点は以下のように整理されます。

環境:CO2排出量の削減、廃水による水質汚染の改善、海洋中のマイクロプラスチックといった環境問題対策。再生可能エネルギーの使用や生物多様性の確保などの観点

社会:適正な労働条件や男女平等、多様性に配慮した職場を構築する人権対策。ワーク・ライフ・バランス、児童労働問題、地域社会への貢献などの観点

ガバナンス:業績悪化に直結するような不祥事の回避、リスク管理のための情報開示や法令順守。資本効率に対する意識の高さなどの観点

■ESGとSDGs・CSRの関係性

まずはじめに混同しやすいESGとSDGs、CSRについて特徴を見ていきましょう。ESGはSDGsと共通する定義があり、近年はセットで語られることが多くあります。

SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年9月に国連がまとめた「持続可能な開発目標」であり、2030年までに世界で達成すべき17の目標と169のターゲットに分けて提示しています。持続可能なより良い世界を目指すための目的が明確化されていることがポイントです。

企業組織が活動を行ううえで社会的責任として掲げるCSR(Corporate Social Responsibility)が、企業からのアピールであり企業視点であることと比較すると、ESGは投資家の視点で掲げられているのが大きな違いです。

ESGがクローズアップされている理由には企業が本業においても正面から環境問題、労働環境問題、人権問題、地域社会への貢献、透明性の高い経営を問われる時代になっていることの証とも言えるでしょう。

■ESG経営が注目される背景

ESGの3つの観点から企業を分析して投資する「ESG投資」に近年注目が集まっています。ESGの観点が弱い企業は今後投資を受けにくくなっていくでしょう。

このことからESGの取り組みは「経営におけるコスト」ではなく、「企業競争を優位に進めるための投資」であると経済産業省のレポートでも指摘されています。

従来、企業価値を測る方法は業績や財務状況の分析が主流でしたが、世界経済フォーラムにて非財務情報であるESGの採点手法が発表されました。ESG投資のためのESGスコアが重要視されるつつあることもESG経営が注目されるようになった背景になっています。

ESG経営のメリット

画像2

ESGを基盤とする経営を進めるメリットはどのようなところにあるのでしょうか。市場価値の向上や、ブランド力の強化、リスクヘッジ、ロイヤリティの向上などが挙げられます。

■その1:投資における市場評価の向上

リーマンショックが起こった当時、投資家は「今見える財務情報」を基準にした投資を行っていたことで苦しみました。そこで「この企業は今後どれほど成長するポテンシャルをもっているのか」という非財務的な情報を重要視する流れが生まれています。

ESG経営(特にガバナンス)に注力している企業は成長の見込みがあるという評価を受けやすいというメリットも。

■その2:ブランド力が強化されイメージアップにつながる

ITの爆発的な推進によってESGのような世界共通の指標は、世界中の誰でも知ることができる情報です。

ESG経営によって「この会社は自分の利益だけではなく、社会に貢献しようとしている」という姿勢が消費者や労働者に認識されると、社会貢献度の高い企業としての評価が高まり、経営の透明性の高い企業としてイメージアップしていくことにつながります。

■その3:経営リスクの軽減に直結する

ESGが浸透していくとESGを無視した企業活動は大きな不評を買ってしまう懸念がでてきます。ESGをおろそかにしている企業は、徐々にユーザーや投資家からの評価を落とし、売上の低下や資金調達が滞ることにも。

劣悪な労働環境の放置は離職率が高まり採用コストが増加、人手不足による生産性の低下にも直結するでしょう。ESGに積極的に取り組むことで、こうしたリスクを軽減できるメリットがあります。

■その4:従業員のロイヤリティ向上につながる

労働環境の改善は社会的評価の向上だけでなく従業員の変化と組織の成長にもつながります。労働環境をより良くすることで、従業員は組織の一員としてやりがいや達成感を感じ、自社へのロイヤリティを強めます。

ESG経営の実現に人事が寄与できること

画像3

ESG経営を進めるためには、ESGの評価基準のなかでも人事においてはSocialとGovernanceで高い評価を得ることが必要です。そのためには人事の役割は少なくありません。

ESG経営を意識した人事制度導入など、人事・研修部門ができることにはどのようなことがあるのか、チェックしましょう。

■ダイバーシティの取り組み

ESG経営を実践するための重要なポイントの一つに、多様性に配慮した労働環境作りが掲げられています。

さまざまな背景を持っている人材を採用したり、ダイバーシティに対する啓蒙を広げるためのセミナーを定期的に開催したりなど、企業内において多様性を浸透させる取り組みを人事から積極的に促していくことが求められます。

多様性の配慮した取り組みは、例えば障害者雇用の取り組みのように「全社員のうち何%」など細かい数値の規定は難しい側面はありますが、外国人雇用における社内規定を改定したり、LGBTを含めたセクハラ対応マニュアルを整備したりなど、取り組むべき施策には様々なものがあります。

■労働環境の安全性を確保

ESG経営においては良質な労働環境の確立が掲げられています。一方で長時間労働や危険な職場環境の改善に経営陣が現場レベルで取り組むことは困難なのが現実でしょう。

そこで人事部門が労働環境を定期的なモニタリングやインタビューなどによって把握し、環境改善を進めることで事故や不正が起こらない組織作りに貢献でいるようになります。また、労働環境の安全性を確保し、継続していくための組織作りや、人事の評価制度の構築も重要です。

ESG経営のメリットを活かして企業価値を高めよう

画像4

"企業価値を高めるにはESG経営が不可欠になる時代が来ています。新しい考え方は社内改革が進み、新しい価値創造を促すでしょう。

正解が無い課題が急増しているなか、スピーディな意識決定力や課題に直面したときに必要な柔軟な対応力などは今後の企業発展の礎になります。ESG経営のメリットを理解し、人材・採用の立場からESG経営の何を後押しができるか議論することが最初の一歩です。

NPO法人クロスフィールズは、社会課題の現場と企業で働く人をつなぐさまざまな事業を行っています。具体的な取り組みは公式noteやホームページでご紹介しています。ぜひ参考にしてください。




みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!