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ベトナムの社会的企業に聞くクロスフィールズとの協働を通じた団体の変化

ベトナムの社会的企業・Tohe(トーへー)は、アートを通じて障がいのある子供たちに表現の機会を提供しています。

2016年以来、これまで5名の留職者を受け入れ、留職以外でもコロナ禍のオンラインによるプロジェクトや交換留職プログラムなど、多くの事業でクロスフィールズと協働してきました。
 
今回はToheのメンバーより、クロスフィールズとの協働を通じて生まれた変化などを伺いました!聞き手はインターンのクレイネスです。

インタビュイー(左から)

Thu(チュゥ)さん:民間企業、NGO、社会的企業での勤務を経て、
現在はToheの事業全体を統括する役割としてCOO(最高執行責任者)を務める。

 Vân(ヴァン)さん:コンサルティングファームに勤務後、Toheに加入。
コミュニケーションデザインやイベント企画などを担当し、
2022年まではエグゼクティブディレクターを務めた。

経験やスキル、新しい視点…留職者が派遣先にもたらすもの

――まず、留職者を受け入れている理由を教えてください。
Vân: 理由の1つに、Toheのスタッフが留職者から多くを学べることがあります。営業やマーケティングの分野での経験を持つ留職者との協働を通じて、私たちも毎回新しい発見がありました。
 
Thu: Toheは小さな企業なので、常に経験豊富な人材を必要としています。だからこそ日本で経験を積んだ留職者に一定期間ジョインしてもらうことは、非常にありがたいです。

これまでクロスフィールズと協働し、毎回素晴らしい留職者が派遣されてきたので、引き続き受け入れたいと思っています。

ベトナムにあるToheのショップの様子

ーーこれまでの留職者で、印象に残っているエピソードは何ですか?
Vân: すべての留職者との思い出がかけがえのないものですが、ここでは一人だけご紹介します。2018年ごろの留職者・福嶋さんです。彼はToheが大切にしている「遊び心を大切に」という価値観に共感し、私たちの考え方や組織カルチャーによく馴染んでくれました。
 
留職中はToheの製品の営業とマーケティングを担当し、日系企業とのコネクションづくりや日本の市場調査などを実施。さらに留職が終わって日本に戻った後も、彼は多くのプロジェクトで私たちをサポートしてくれました。彼の成果はもちろん、真摯に仕事へ取り組む姿勢や丁寧さから私たちもたくさん学ばせてもらいました。

留職者の1人・福嶋さん(写真・左)とToheメンバー

Thu: 福嶋さんだけでなく、多くの留職者から仕事に対する姿勢を学ばせてもらいました。また、みんな何事にも意欲的なことが印象的でした。彼らが主に担当するのはアート製品の事業が多かったのですが、アート教室など他事業についても積極的に学び、時に関わってもらいました。日本でビジネス経験がある留職者からは、知識やスキルを共有してもらうことが多くあります。新しい環境でもすぐに馴染み、自分の経験やスキルを還元しようとする留職者に、毎回とても感激しています。
 
Vân: 新しい視点をもらえる点も大きいですよね。Toheは長らく同じメンバーで働いているので、時に新しいアイデアの創出が難しいこともあります。そのような環境で留職者など新しい視点を持った外部の人材を受け入れると、私たちの考え自体がアップデートされ、次の挑戦をするきっかけになるんです。

コロナ禍でクロスフィールズとクラファン実施!成功が自信に


――コロナ禍ではクロスフィールズとクラウドファンディングを行いましたよね。実施した背景と取り組みの内容を教えてください。
 
Vân:コロナ禍で私たちの事業は大打撃を受けました。製品生産は停止され、販売もできず、店舗閉鎖を余儀なくされました。あの期間はToheメンバーみんな不安を感じており、普段のようなエネルギーや「遊び心」を持てませんでした。
 
こうした状況をクロスフィールズに共有すると「自分たちができることはないか」と考えてくれ、過去の留職者2名と一緒にチームアップし、プロボノで資金調達をするプロジェクトを立ち上げてくれました。

クラウドファンディング時の様子

Vân:オンラインで何時間も話し合った結果、クラウドファンディングを実施することに。集まった資金は100万円以上になり、大成功でした。返礼品としていくつかのTohe製品を用意したのですが、日本人の方々が好む製品の傾向も知れ、マーケット調査の機会にもなりました。
 
クラウドファンディングの成功は私たちに自信を与えてくれました。コロナ禍は本当に辛くて困難ばかりでしたが、クラウドファンディングの成功を経て「これからはすべてが良い方向に向かう」と信じることができました。
 
プロボノのチームとはすべてオンラインでやりとりしていましたが、毎回とても楽しく、かついつも前向きでいてくれたので、彼らとの時間からたくさんのエネルギーをもらいました。

交換留職で日本の団体とのつながりが生まれる

――2022年には日本でアートを通じた包摂的な社会づくりに取り組むAble Art Japan(以下、AAJ)と学び合う「交換留職」に参加しましたよね。

このプログラムでは、ToheメンバーのMingさんとTrangさんをAAJに、AAJメンバーの平澤さんをToheに、それぞれ派遣しました。交換留職に参加した感想を教えてください。
 
Vân:最初にクロスフィールズから交換留職を提案してもらったとき、素晴らしいプログラムだとワクワクしたことを覚えています。このプログラムへの参加を決めたことは、自分自身で最も誇りに思う決断の一つと思うほど、たくさんの実りがありました。
 
まず、AAJは30年近く活動しているため、彼らの事業モデルや取り組み内容から多く学べることを期待していました。そして、その期待は100%達成できたと感じています。私たちがAAJから受け入れた平澤さんは、アート鑑賞をはじめとするアートを通じた障がいのある人との活動経験が豊富にありました。

彼女は3.5週間ほどToheで活動し、一緒にアート鑑賞教室プログラムをつくりました。そのなかで、プログラムの造成のノウハウを共有してもらいました。

平澤さん(写真中央)が、Toheで活動している様子

VânToheの2名がAAJに留職した経験からも、たくさんの学びがありました。参加者のTrangはTohe製品のデザイナー、Mingはプロジェクトマネージャーでした。

Trangは「AAJは障がいのあるアーティストの方々を尊敬し、製品開発において彼らのオリジナリティを守ることを大切にしている姿にとても感銘を受けた」といいます。一方のMingはAAJがイベントやプログラムを実施する時、どのようにして障がいのある人もない人も包摂するようにしているのか?という点から多くの学びを得ることができたと話していました。
 
ベトナムにはアートを通じた障がい者支援を行う団体がほぼなく、参考にできるロールモデルがいませんでした。そのためAAJと協働する経験は非常に価値のあるものでしたし、他のToheメンバーもMingとTrangの経験談から新しい視点を得ることができたと感じています。
 
交換留職の期間が終わってもAAJとの協働は続き、ハノイで展覧会を主催。一緒にアートワークショップなどを行い、1,300名以上の来場者がありました。(イベントの様子はこちら

このように交換留職という1つのプログラムをきっかけに新しい事業が生まれたので、本当に参加してよかったです。

クロスフィールズは良き友人であり、信頼できるパートナー

――Toheにとってクロスフィールズはどのような存在ですか?
 
Thu: 一言で表すなら「良き友人」です。仕事だけではなく、友人としても大切な存在です。これまでToheとクロスフィールズは様々な協働をし、この友情が育まれてきたと感じています。クロスフィールズと良い関係性でいれることにとても感謝しています。
 
Vân :私もクロスフィールズは「信頼できるパートナー」だと思っています。私たちはクロスフィールズのメンバーから多くのことを学びました。

例えばプロジェクトマネジメントや留職者との向き合い方などです。クロスフィールズのプロフェッショナリズムと勤勉さ、そして常に前向きな姿勢からいつも刺激をもらっています。

日本をはじめ、アジアのソーシャルセクターともネットワークを持っている点も心強いです。これからも一緒に仕事をする機会が増えることを願っています。

編集後記

インタビューのなかで留職者を受け入れることは団体にとってもメリットがたくさんあると伺い、このプログラムの仕組みはとても素晴らしいと感じました。また、お二人が過去の留職者について一人ひとり鮮明に覚えており、彼らとの思い出をたくさん話してくれたことが嬉しかったです。
 
個人的にこのインタビューで最も感動したのは、お二人がToheとクロスフィールズの関係を「友人」と表現したことです。困難な時も信頼できる友人として支え合った経験は、双方にとって特別なものになったのではないでしょうか。同時に、クロスフィールズとの協働でどのような影響が生まれたのか、他の団体にも聞いてみたいと思いました!(インターン/クレイネス映奏)

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Toheとの取り組みについては、以下の記事でもご紹介しています。

Toheのwebサイトはこちら:https://www.tohe.vn/
Able Art Japanについてはこちら:https://www.ableart.org/