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リモート環境のエンゲージメント施策とは?人事トップたちが語るカギ

「リモート環境でも社員のエンゲージメントを向上させるには、どうすればいいのか」。そんなお悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。今回は組織エンゲージメントについて先進的な取り組みを行うユニリーバ・ジャパン島田由香氏とPwC Japan沖依子氏をお迎えし、クロスフィールズ小沼が実践談などを伺いました。

3者が考える組織エンゲージメント施策のポイント
一般的にエンゲージメントは「組織と従業員の間で互いに信頼関係がある状態」と言われています。エンゲージメントが高い組織はチームワークが優れ、成果が出やすいと耳にする方も多いはず。そこでセミナーではエンゲージメントの定義や高める方法について3者がそれぞれの視点からお話しました。

組織エンゲージメント向上の3つのカギ

最初にクロスフィールズ小沼が様々な事業を通じて企業の人材育成に携わってきた視点から、自身の考える「組織エンゲージメントを向上させるカギ」をお伝えしました。

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小沼大地:青年海外協力隊、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て2011年クロスフィールズ創業。代表理事を務める

小沼:僕が考える「組織エンゲージメント」を向上させるカギは3つあります。まず大切なのがメンバーと組織の目的(パーパス)がつながっていること。メンバーそれぞれが持つ「人生をかけて成し遂げたい」パーパスと、組織の目指す方向が合致していることです。これがエンゲージメントの根幹にあるとも思っています。またメンバーが様々な感情を共有できる心理的安全性も重要。そして自分の仕事が社会に価値を生み出しているという実感をメンバーが持つことも大切になってきます。事業が社会に生み出すインパクトを感じることで、一人ひとりが仕事の意義を見出し、組織エンゲージメントにつながるのです。

I’m possibleになった瞬間、エンゲージメントは生まれる

続いて島田氏より、自身が考えるエンゲージメントの定義とその生み出し方について伺いました。(以下、敬称略)

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島田由香:ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社 人事総務本部長。米国コロンビア大学大学院にて組織心理学修士取得後、2014年より現職。学生時代からモチベーションに関心を持ち、キャリアは一貫して人・組織にかかわる

島田:私は「エンゲージメント」の前提として、第三者の存在があると考えています。ですから組織エンゲージメントとは、メンバーが組織やチームのため自発的にコミットメントしたいと思うかどうか、ということになります。これが生まれるのはメンバーが「できない(=impossible)」と感じてしまっていることに対して「相手のためならできる (= I’m possible) 」という気持ちになった瞬間。

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では、どうすればこの心理的変容が起こるのか。まずメンバーとの丁寧なコミュニケーションが大切です。そしてメンバーが「誰かのために自ら行動をするきっかけ」も必要となってきます。このきっかけは以下の3点で提供できると思います。

1. メンバー自身の成長:相手のために行動した結果、得られる成長実感
2. 自律的に行動する機会:誰かのために主体的に物事を進める機会を得て、行動する体験
3. 自分や自分の仕事の価値を感じる瞬間:自分の仕事がチーム、組織、社会など何かしらの相手に対して与えたインパクトの実感

人事担当者が提供すべきなのは、メンバーと組織がコミュニケーションする機会に加えて、このような「きっかけ」なのだと考えています。 

パーパスの自分事化とコミュニケーションが大切

沖氏からは、エンゲージメント施策を実践するなかで見えてきたポイントを伺いました(以下、敬称略)

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沖依子:PwC Japan合同会社 人事部 ラーニング&デベロップメント リーダー 兼 公益財団法人PwC財団 チーフプログラムオフィサー
(株)リクルートを経てPricewaterhouseCoopers MCS (Management Consulting Service)入社。2001年IBMによる事業統合に伴い移籍。オペレーション改革系プロジェクトを多数担当。2013年PwCに再入社し現職。

: 組織エンゲージメントに影響を与えるものとして「パーパスへの理解度」があると考えています。組織のパーパスを自分事に置き換えて仕事する人とそうでない人とでは、組織エンゲージメントにも差が出てくるということです。私自身、当社のパーパス(「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」)と、自分の仕事を結びつけて業務にあたっています。担当している業務が社会に与える価値を意識すると、組織エンゲージメントが高い状態で仕事ができると実感しています。

もう1つが信頼できる相手との対話です。当社ではキャリアアドバイザーの役割を果たすキャリアコーチが全社員に割り当てられており、このコーチは先輩社員が担当。社員は定期的にキャリアコーチと対話する仕組みです。当社がグローバル規模で実施している従業員サーベイの結果から、キャリアコーチとの対話が多い社員ほどエンゲージメント指数が高い傾向があると明らかになっています。つまり信頼できる社内メンバーとコミュニケーションを重ねることが、エンゲージメント向上のカギだと考えています。 

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続く時間では島田氏、沖氏、小沼の3者によるクロストークを展開しました。

効果的なエンゲージメント施策とは?

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:どんな施策にも共通するのですが、「社員の感情を動かすこと」が大事だと思います。この感情とは相手への感謝や仲間への誇りです。必ずしも特別な施策である必要はなく、社員同士が感謝を伝える・称え合うなどを通じてエンゲージメントは高まります。

島田:社員が仕事のやりがいを外部の人に語る機会を生み出すのも効果的ですよね。あとは社外の人と接する「越境」もいいと思います。異なる考え方や価値観に触れて自分の環境の素晴らしさに気付くきっかけになるのではないでしょうか。

小沼:越境によるエンゲージメント向上は自分も実感しています。留職プログラムでは社外に出て、そこで改めて自社の可能性や良さに気付く参加者が多くいました。

リモート環境でのエンゲージメント向上は可能?


島田:オンラインだからできない、と考える必要はないと思います。大事なのは組織が個人の可能性を信じて施策を行うことではないでしょうか。

:オンラインだからこそできる、という考えのもと私たちも様々な施策に挑戦してきました。例えばアバターを活用したバーチャル入社式など。これまで現地訪問しながら実施してきた、社会課題体感フィールドスタディもオンライン型を導入しました。その結果、参加者は改めて自分の仕事やキャリアが当社のパーパスと繋がっていく実感をもつなど大きな効果を感じています。子育てなどの都合で現地訪問が難しかったメンバーもオンライン型には参加でき、リモート環境はむしろプラスに働いたとさえ思います。 

小沼:社会課題体感フィールドスタディ含め、クロスフィールズでは多くの事業をオンライン化し、そのメリットや可能性を実感しています。今後はリアルとも組み合わせ、それぞれのいいとこ取りをしていきたいです。

QA:エンゲージメント施策のROI(投資利益率)とは?

セミナーでは参加者からは多くの質問をいただきました。その中から1つご紹介します。

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:ご質問は「エンゲージメント施策のROI(投資利益率)はどう考えるべきか?」というものですが、まず組織としてエンゲージメント施策は長期的だという覚悟を持つことが大事だと思います。そのうえで私たちはエンゲージメント施策のROIを中長期的な視点かつ定量・定性どちらのアプローチも使って考えています。

島田:「人の事」は目に見えないという前提のもと、エンゲージメント施策の効果を人事部が信じて実施するのが大切です。「ROIが見込めないから施策はしない」というネガティブな方向ではなく、社員がきっと応えてくれるというポジティブな考えで進めるべきだと思います。 

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参加者の方々からは「社員の感情にこそ価値がある、という話が刺さった」「リモート環境を制限と捉えず、その先に進んでいる人事担当者の姿が印象的だった」など多くの反響をいただいた今回のセミナー。クロスフィールズでは今後も無料セミナーを企画・開催していきます。 

なお、オンライン型フィールドスタディについては以下の参加者レポートやこちらのwebページにて詳しくお伝えしています。合わせてご覧ください。