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ドコモ人事部が語る「社会課題の現場に越境する価値」

NTTドコモでは2018年より留職を導入し、これまで7名がプログラムに参加しました。留職をはじめ、社員に向けて様々な越境プログラムを展開する同社 総務人事部 育成担当課長の伊藤さんと育成担当 衛藤さんより、留職プログラムを導入する背景や越境人材を通じて目指す組織のあり方について伺いました!

インタビュイー
伊藤孔明さん:総務人事部 採用・育成 育成担当課長
入社後はLTEエリアの展開に関する業務全般に携わる。
2021年より総務人事にて主に採用・育成に関する業務に従事中。

衛藤マリさん:総務人事部 採用・育成 育成担当
これまでドコモショップ向け販売企画や訪日外国人向けサービスに携わる。
文部科学省の官民協働プロジェクトに参画後、越境経験を活かして2019年より現職。

インタビュワー
鈴木園子:クロスフィールズ留職/IMチームリーダー。
2021年に加入後、主に留職プログラムに携わり、NTTドコモからの参加者も担当。

グローバル人材と越境人材の育成のため留職を導入

――留職プログラムを導入している背景を教えてください。

伊藤:当社では中期事業計画のテーマの1つにグローバル事業の展開を掲げています。2024年7月には「NTTドコモ・グローバル」を設立し、これまで培ってきたサービスや人材などのアセットを組み合わせて、グローバル事業の展開を加速させていきます。
 
このような状況において、異なる価値観を持つ人々を巻き込んで新たな事業を生み出せるようなグローバル人材の育成が急務となってきます。そこで単なる語学研修ではなく、実践を通じたグローバル経験を得てもらうため、様々な施策を通じて人材育成に取り組んでいます。
 
留職は「社会課題の現場」という普段とは全く異なる環境に飛び込んで、タフアサイメントを通じて国内外の課題解決に携わる経験ができるため、グローバル人材と越境人材両方の育成施策として導入しています。

衛藤:他企業に一定期間派遣する他の越境プログラムも実施していますが、留職は派遣先が社会課題解決に取り組むNPOやスタートアップなので越境の幅が大きく、参加者の変化も著しいのでは、と思いました。

未経験の業務に携わりながら「グローバルな社会課題」という複雑なテーマに取り組むのはまさしくタフアサイメント。これを乗り切って成功体験を積む経験は必ず自信になりますし、キャリア自律の土台になると思いました。

社会課題に向き合うことで得られる高い視座

――プログラムを実施して、どのような価値を感じていますか?
伊藤:正直、留職を初めて知った時は「戻ってきた人材がどう活躍するのだろうか?」と思っていました。留職での経験がどのように自社事業の貢献につながるのか、イメージが湧かなかったのです。

しかし留職者の経験や彼らの変化を目の当たりにし、いい意味で裏切られたと感じています。というのも留職の参加者は「社会課題」という漠然としたイシューに向き合うことで高い視座や広い視野を得て企業に戻り、留職での学びを活かしながら現場で活躍しているからです。

企業で働いていると目標がKPIなどにブレイクダウンされ、近視眼的にならざるを得ない面もあります。一方、NPOでは「社会課題の解決」というあまりにも大きな目標を突きつけられ、その解決に向けて自分ができることを考えていく必要があります。
 
留職者は「絶対にこの社会課題は、解決しないといけない」という気持ちで課題解決に向けて全力投球します。それと向き合う過程において、社会課題の解決というゴールと、解決に向けて今の自身ができることとの「ギャップ」を突きつけられ、このギャップを埋めるために足りないスキル/経験や必要な行動について考える必要がある。

いわば社会課題に向き合うことで留職者は自分自身を「丸裸」にさせられるのではないか、と思っています。自分と向き合い、自身をメタ認知し、課題解決のために必要な自己変革を行う……。このような強烈な「原体験」を得ることで、人間としての基礎力が培えるのだと感じています。
 
衛藤:人材育成というと、業務に直結しやすいスキル系の研修が想起されやすい傾向がありました。でも留職はスキル系の研修では得られないような、視野の広まりなど「並行の成長」と、人としての深みが増す「垂直の成長」のどちらも経験できると感じています。

これを特に実感したのは、留職後の報告会でのことです。留職参加前よりも自分自身を俯瞰的にとらえて、自分の言葉で留職を通じた自己成長や今後のキャリアを語っている彼らの姿を見ると、「留職だからこそ実現できる成長の形」があることを実感しています。

衛藤:参加者の成長の背景には、クロスフィールズさんの丁寧な伴走もあると思います。プログラム参加者は、今までの経験や思考のクセなどそれぞれ個性がありますが、クロスフィールズさんは彼らの特性に合わせて伴走をし、関わり方を調整してくれるので、安心して任せられました。かといって過保護ではなく、時にビシっと言ってくれる点も、本人の成長と派遣先への貢献につながっていると感じています。

越境経験は人生を豊かにする

――なぜいま、越境経験が大切なのでしょうか?
 
伊藤:変化の激しい時代において、異なる環境で事業を生み出したり、新しい取り組みを自ら実施したりできる人材が重要となっています。そのため、当社でも越境経験人材のニーズが高まっており、様々な越境プログラムを実施しています。期間や越境先も多様化しているので、社員が自分にあったプログラムを選択できることを意識しています。
 
個人的には、コンフォートゾーンから抜ける越境経験は全社員にしてもらいたいです。当社で活躍する人材の育成、という意図もありますが、それよりも一度アウェイの環境に身をおいて自分のキャリアを見つめ直す経験は、人生において価値のあることだと思います。人生を豊かにする意味でも、より多くの人に越境を経験してもらいたいです。

衛藤:そのうえで、よりタフな越境である留職プログラムに特化していうと、参加者に求めたいのは越境する目的を自分の言葉で語れること

私自身、1年間の社外越境をした経験があるのですが、長期かつ異文化度の高い越境は視野もキャリアもぐんと広がる一方、想像以上にタフで辛いときもあります。だからこそ目的を持ち、派遣先での業務にフルコミットできるほどの熱意を持った人に参加してもらえたらと思います。

衛藤:ただ、社内での「越境」の認知度はまだあまり高くないんですよね……そのため、越境がキャリア自律に必要な理由を社員目線で発信し、「自分にも越境が必要だ」と思った社員のみなさんが自身の状況やニーズに合ったメニューを選べるような環境作りを行っています。

具体的には、今年度から「NEKKYO」という名称でグループ内の各種越境プログラムを体系化、広報も強化しています。越境の意義をグループ内の共通認識として広め、「いつも」の外に一歩踏み出す方をさらに増やしていきたい、という想いです。

越境経験者の活躍が「越境文化」を醸成する

――留職プログラム経験者にはどのような活躍を期待していますか?

伊藤:まずは強い主体性を持ち、帰任後の配属先で活躍してほしいです。越境経験者の活躍をみた周囲の人々が「越境って大事」と思い、越境する人が増えていくと、自ずと「越境文化」が組織に生まれると思います。なので、越境経験者には社内に変化を生み出すという意識を持ちながら、渦をつくって周囲に良い影響を及ぼしてほしいです。

衛藤: たしかに「越境したら終わり」ではなくて、越境経験で培った新しい視点や客観的に自社や自組織をみる視点を持ち続けてほしいです。「越境先ではこうだったのに、なぜうちでは違うんだろう」という健全な違和感を持ち、自ら行動してポジティブな変化を起こしていくことを期待しています。

 「越境経験者は2度葛藤する」といいますが、越境先でのショックに加えて、所属元に戻ってきたときに「自分が変わった一方で、何も変わっていない職場」のギャップに悶々とする。この2度の葛藤を乗り越えたら、さらなる成長につながると思うので、越境後のフォローも大切にしています。

社会に価値を還元できる組織として

――最後に留職をはじめとする越境プログラムを通じて創りたい組織のあり方を教えてください

伊藤: 変化の激しい時代において、企業が営利目的に走りすぎると立ち行かなくなるという危機感があります。利益を上げるだけではなく、社会価値を提供することも必要ですが、日本ではまだその動きがスローだと感じています。 当社では、「大企業でも社会に価値を還元できる」ということを体現し、「NPOでなくても社会課題の解決に取り組める組織」だと認知され、これをやりたいと思う人に参画してもらい、彼らが活躍できる組織にしたいです。

社内にも社会課題解決に取り組みたいと思いつつ、できないと感じている人は少なくないと思います。彼らがより活躍できる土壌をつくりたいですし、越境を通じて社外とのつながりを提供していきたいです。
 
衛藤:いいですね、私もぜひやりたいです!もっと越境を広めたいですし、私自身も知見をアップデートしていきたいです。「越境文化」が新しいイノベーションの起こる組織の土壌になると思います。

インタビュー後記

ドコモさんと留職をご一緒するなかで、人事部の方々と「留職者の本質的な変化」についてディスカッションをすることが多いな、と感じています。その背景には、伊藤さんや衛藤さんが留職や越境への深い共感や期待を持たれながら、留職者さながら本気で越境プログラムに取り組まれていることがあるのだと、インタビューで実感しました。

今後もドコモさんで活躍される越境人材の育成と「NPOでなくても社会課題の解決に取り組める組織」づくりの一助になれるよう、「越境×社会課題解決」に取り組むパートナーとして共に歩みを進めていきたいです。(鈴木園子)

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留職プログラムに関しては以下よりご覧ください。

ドコモより留職に参加いただいた方の記事は以下よりご覧いただけます。