SX(サステナビリティトランスフォーメーション)とは?企業にとってSXが必要な理由や取り組み事例もご紹介!
「サステナビリティ」という言葉が広く使用されるなか、最近は「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」というキーワードがビジネスシーンを中心に使われています。
一方でSXとは何かよくわからない、という方も多いのではないでしょうか。この記事ではSXの定義やDXなどとの違い、ESG投資やSDGsとの関係性をご紹介。また、企業がSXを実施するメリット・デメリットについてもお伝えします。
SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは
SXは欧米発の言葉に聞こえますが、実は日本発の概念です。SXは2020年に経済産業省が提唱し、注目を集めてきました。経済産業省はSXを以下のように定義しています。
つまり企業が利益創出をしながらも、社会・地球環境が持続することを同時に目指す概念がSXだと言えるでしょう。また、時間軸を長期で捉えていることも特徴です。
SXに必要な3つの要素
経済産業省は企業がSXを実現するにあたり、3つの要素が必要だとしています。それは①企業としての「稼ぐ力」の持続化・強化 ②社会のサステナビリティを経営に取り込む ③企業と投資家による対話です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
①企業としての「稼ぐ力」を持続化・強化:企業自身が持続可能でなければ、SXは実現できません。そのため企業が自社の強みや競争優位性、ビジネスモデルを活かしながら、企業自身のサステナビリティを実現することが大切だといわれています。企業は中長期的なスパンで事業ポートフォリオのマネジメントを行ったり、イノベーション創出に向けた種まきをしたりして、自社のサステナビリティを高めていくことが大切です。
②社会のサステナビリティを経営に取り込む:社会の状況をキャッチし、それを企業活動に取り込んでいくことも求められています。VUCAと呼ばれる先の見えない、不確実性の高い時代において、企業は将来の社会の姿(=サステナビリティ)から逆算しながら必要な取り組みを考え、経営に反映していくことが必要です。
③企業と投資家による対話:SXの実現には企業と投資家が長期的な時間軸で対話を繰り返すことも必要です。これによって企業と社会のサステナビリティが同期され、レジリエンス強化につながるといわれています。その前提として、企業が社内外のステークホルダーに対して「持続的な社会の実現に向けてどのような価値を提供できる存在か」という存在意義を発信することがあります。その上で、「達成のための重要課題の特定」、「長期ビジョンや長期経営計画の立案」、「戦略等の実行・検証・フィードバック体制まで含めた対応」等が求められています。
SXとDX・GXの違い
SXと似た言葉として「DX」「GX」がありますが、それぞれSXとは大きく異なる意味を持っています。
DXとSXの違い
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは「情報通信技術(ICT) の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」だと言われています。DXとはICTの活用により産業構造を変えていくことである一方で、SXは企業と社会のサステナビリティを目指す概念だ、という点に違いがあるといえるでしょう。
GXとSXの違い
GX(グリーントランスフォーメーション)とは、経済成長と環境保護を両立させ、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」という概念で、経済産業省の提唱に基づき生まれました。GXが環境問題、特にカーボンニュートラルに焦点をあてる一方で、SXは環境問題だけでなく人権や経済格差などの社会課題も網羅している点で異なっています。
SDGsやESGとの違いと関係性
上記に加え、SXと似た概念としてSDGsとESGがあります。それぞれ「より良い社会の実現」に向けた概念ですが、具体的にどう違うのでしょうか。
SDGsとSXの違いと関係性
SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)は2015年に国連で採択された世界共通の目標です。SDGsは17のゴールと169のターゲットから構成されています。SDGsのゴールには「貧困をなくす」「不平等をなくす」「すべての人に健康と福祉を」などがあり、社会全体の課題を乗り越えることが掲げられています。
2030年までにこれらのゴールを達成するには、企業・行政・NPOなどのあらゆるセクターが協力して課題解決に取り組むことが不可欠です。そのため、SXは「SDGsを実現させるために必要な社会変革」ともいえるでしょうSDGsについて、詳しくは以下の記事もご覧ください。
ESGとSXの違いと関係性:ESGとはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governence(企業統治)を表します。ESGは投資家の「指標」という側面があり、企業が社会的責任を果たす行為をしているか見極めるものだという特徴があります。企業がSXに取り組み、企業と社会どちらもの持続性を実現できれば、ESGの観点からも投資家から高く評価されることが期待できます。ESGについては以下の記事もご覧ください。
SXが必要な理由とメリット・デメリット
企業がSXを実際に進めるなかで、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。メリットとして「VUCA時代における企業のレジリエンス強化」「社会課題に取り組むことで、社会における企業価値の向上」がある一方で、デメリットとして時間的・人的コストがかかることが考えられます。以下で説明していきます。
メリット:企業を取り巻く社会変化に対応できる
VUCAの時代と言われるように、企業を取り巻く環境変化の不確実性は高まっています。そのような環境のなかで企業自身が存続するためには、企業経営のサステナビリティやレジリエンスの強化が必要です。SXは中長期的な視点で「ありたい社会の姿」からバックキャストして考え、不確実な社会環境でも持続的な経営のあり方を実現していくものです。
つまり、SXは社会変化への対応ともいえ、企業のサステナビリティやレジリエンスにつながるでしょう。また、SXを通じて企業と社会のサステナビリティを実現している企業は、ESG投資の評価にもつながり投資される可能性が上がる、という点もメリットの1つです。
デメリット:時間的・人的コストがかかる
SXは一朝一夕で実現できるものではなく、成果が目に見えるまで時間がかかります。また、SXは全社的に取り組む必要があり、経済産業省はSXの実現に向けて、以下の5点を企業や投資家が取り組むべきだとしています。
これら5つを一度に取り組むことは厳しいですが、1つずつ行い、SXの実現に取り組んでいる企業事例も。次のパートで詳しくお伝えします。
企業によるSXの実践事例
住友商事(株)の事例
住友商事はマテリアリティ(重要課題)の設定と社員への浸透に取り組んでいます。マテリアリティにおいては、「社会とともに持続的に成長するための6つのマテリアリティ(重要課題)」を設定。長期・中期それぞれで目標を決め、各事業で取り組みを進めています。
同時に研修を通じて社員が社会課題を自分事として捉える取り組みも実施。社内プログラム「100SEED」では世界各地の住友商事グループ社員が対話し、それぞれの地域社会の課題解決に取り組んでいます。また、社会課題を体感して自身の志を見つめる研修も導入。役職者を中心に社会課題と自身の事業をつなげ、経営戦略を策定する動きが加速しています。詳しくは以下の記事からご覧ください。
富士通(株)の事例
富士通では、2020年に企業パーパスを「イノベーションによって社会に信頼をもたらし世界をより持続可能にしていくこと」に刷新し、全社的にSXに取り組んでいます。また、2021年には「Fujitsu Uvance」を策定。社会課題の解決に向け、社会に対して持続可能な価値を提供するために各事業でアプローチしていくものです。
また、同社では社員の理解浸透の取り組みを実施。その事例として社内表彰制度があります。「サステナビリティ貢献賞」という評価の仕組みをつくり、ICTで社会課題を解決したり、コロナ禍のニーズに応じたサービスを素早く展開した活動等を称するもので、社員が自身の仕事に「社会課題の解決」という軸も据えることを目指す取り組みです。
SXへの第一歩は自社のパーパス設定と社員の理解浸透
SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは、企業が利益を創出しながら、社会・地球環境が持続することを同時に目指す概念です。2020年に経済産業省によって提唱された概念で、SXに取り組むことがSDGsの達成につながると考えられるでしょう。
SXには時間的・人的コストがかかりますが、不確実性が高まる社会環境で企業が持続的に活動するためには、目に見える財務状況だけではなく、中長期的な社会へのインパクトも視野に入れることが求められてきます。事例にあるように、まずは自社としてのパーパスやマテリアリティを設定し、同時に社員が社会課題を理解し、自身の業務と結びつけて考えるきっかけを提供することがSXの第一歩かもしれません。
NPO法人クロスフィールズでは企業のSXの加速につながるプログラム「社会課題体感フィールドスタディ」ほか、社会課題の現場と企業で働く人をつなぐさまざまな事業を行っています。具体的な取り組みは公式noteやホームページでご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
また、これまでSXをテーマとしたイベントも実施しています。